「その任には堪えられない人々」が登用される現状
他方で、一般にはあまり知られていない点だが、防大は一般の大学等と同様、学校教育法に沿って文部科学省が定める「大学設置基準」に服しており、卒業時には大学改革支援・学位授与機構の審査を経て、学士の学位(学士号)が授与されている。
防大のカリキュラムは、いわゆる軍事教練にあたる「訓練課程」と、学術・科学分野を学ぶ「教育課程」に分かれている。
後者の「教育課程」には、防大特有の「防衛学」だけでなく、人文学・社会科学から、理工系の基礎科学・応用科学、そして外国語まで、一般の大学等と変わらぬバリエーションがそろっている。このように、防大が「大学設置基準」に沿った教育機関(かつ研究機関)と認定されているからこそ、防大の卒業生には、他の大多数の「大学校」(各種学校)と異なり、学士号が授与されているのだ。
ところが、等松教授の告発文書によれば、「防衛学」を担当する自衛官教官の多くが、文官教官のような教育能力や研究業績の厳格な審査を経ずに、教授や准教授に採用されており、「とてもその任には堪えられない人々」も少なくないという。
一方で、文官教官が雑誌や新聞に論考やコメントを発表する場合、原稿を事前に事務部門に提出しなければならず、学術的には素人の事務官が事実上の検閲を行うばかりか、原稿を書き換える事例さえあるという。
筆者は率直なところ、驚愕した。