石川と青木の特殊性

僕がみなさんに伝えたいのは、石川と青木はある意味、技術面で特殊な選手だということだ。

石川は、オープン戦で打たれる場合がある。しかし、僕はまったく心配していない。開幕に合わせているのを何年も一緒にやっていて知っているのと、石川の球は二軍の打者にタイミングが合ってしまうからだ。それは、球が遅く、ストライクが来るという極めてシンプルな理由による。逆説的だが、だからこそ、一軍では通用する。

球の出し入れ、緩急、石川の投球術は一軍でこそ生きるものなのだ。

彼の探求心は、「相手チームは、自分をどう研究しているのだろう?」というところにまで行き着いているようだ。そのうえで相手の裏をかこうとしているのだから、恐れ入る。いまの若手投手たちは、年齢を重ねるにつれ、「石川さんはすごいことをやっていたんだな」とようやく気づくことになるはずだ。

青木も、一軍でこそ結果を残す打者だ。僕が二軍監督だった時、青木がケガ明けの調整で二軍にやってきた(そこにいたのが入団1年目の村上だった)。青木は独特の調整法を採っているようで、ファームの試合ではそれほどヒットは出ない。ファンは不安だっただろう。ところが、一軍に上がった途端にバンバン打つ。

打撃のことは詳しくは分からないのだが、とにかく一軍の投手にはタイミングが合うようなのだ。青木は天才肌なのだと改めて感じた。

僕が石川と青木から学んだのは、オープン戦やファームでの結果だけで判断してはいけないということだ。ベテランには「味」がある。その味がどこで生きるかを判断するのも監督の仕事だ。

#2はこちら

『理想の職場マネージメント~一軍監督の仕事』(光文社)
高津臣吾
高津監督の頭が上がらない2人のベテラン選手。「二軍ではそれほど活躍しないが、一軍になると生きてくる」_2
2023年5月17日
990円
232ページ
ISBN:978-4-334-04665-1
セ・リーグ連覇、交流戦優勝、ゆとりローテーション、言葉の力――球界
に革新を起こす名将が、自らのマネージメント手法を克明に語る。3連覇に向けて、
「さあ、行こうか!」

「チーム一丸となって」――誰もが念仏のように唱えるが、その方法について
言及されることは少ない。その方法をずっと考えてきて、僕がたどり着いたの
は次の言葉だ。
「相手のことを思いやり、相手のことを知る」
組織の目標達成のために、個人は仕事をする。僕は監督としてチームを指揮す
る。とはいえ、監督はすべてを自分の思い通りにしていいわけではない。自分
の考えを押し付けてばかりでは、周りの人たちの仕事に対するモチベーション
は上がらないだろう。 そこで重要に
なるのは、一緒に仕事をする人たちが、組織のためにどうしたいと思っている
のかを想像することだ。(本文より)
amazon