世界最大の発電企業

上海電力日本は、国内ではあまり報道機関の取材を受けない。2022年秋以降、同社のHPもメンテナンス中ということで、半年間も閉ざされたままだった。

そうした傾向は、13年9月の創業当時からのようで、東京・丸ビルにある本社は取材に応じなかったらしい。朝日新聞アエラの山田厚史氏(元編集委員)も断られた一人だ。

日本法人の責任者への接触を何度か試みたが、「忙しい」「外国出張中」という返事ばかりで、会えなかった。上海の本社に電話してみたが、「日本のことは日本の会社に聞いてくれ」とにべもない。 (「Asahi Shimbun Weekly AERA」14年1月27日)

それから10年、上海電力日本は躍進した。

経団連の会員には15年になっている。中国企業ではファーウェイに次いで二番目で、両社は今も会員である。上海電力日本はこの間、若くて優秀な転職組を採用し、再エネ政策のメリットと地元対策を徹底して研究してきたものと推測する。なぜなら、13年当時と比べると、企業としての存在感と日本経済界への浸透具合には隔世の感があるからだ。

上海電力日本はこれまで、資源エネルギー庁から全国で90か所以上の認定(事業計画認定)を受け、事業を全国展開させている。昨今はソーラーのみならず、風力、バイオマス(間伐材)の分野にも進出しており、国内有数の発電事業体になっている。

歴史を遡さかのぼると、上海電力(上海電力股份有限公司)の伝統のすごさがわかる。

華東地区最大の電力会社(本社 上海市)で、1882年、世界で三番目、アジアで初めて電灯を灯ともしたという。1930年代には米国資本に買収されていたが、清国の共同租界の中で配電独占権をもっていた。当時、覇権争いをしていた日本は、この上海電力がほしかった。

「取材NG、撮影するな」…知らぬうちに日本で大躍進した「上海電力」の恐るべき実力。外資でも排除できない理由とは_3

いつの間にか逆転された日中関係

大阪毎日新聞は次のように報じている。

上海電力の日本電力への合流を政治的に解決するかせねばならない。…上海電力の買収は当然来たるべき問題である。(1938年2月4日)

列強諸国を前に日本が思うような買収はできなかったが、時代は下って、2012年。

八十余年の時を経て、基幹電力インフラへの進出という意味において、日中両国の立場は逆転した。

上海電力の売上高は12年に約2500億円までになり、翌13年、日本で全額出資の子会社をつくった。上海電力日本(本社東京、設立時資本金89億円)である。グリーンエネルギー発電事業への本格参入を見込んでの設立だという。

現在の上海電力日本の総元締めは、「国家電投SPIC」(国家電力投資集団有限公司 State Power Investment Corporation)だ。筆頭株主(46.3%)で、私が福島県西郷村で被ったヘルメットにも印字されていた企業である。

この「国家電投SPIC」は国有独資会社(国家が100%出資の国有企業)で、従業員総数はおよそ13万人。企業の規模として東京電力の約3倍だ。その発電規模は1億5000万キロワット(21年)。うちクリーン発電設備(原子力含む)が過半数(50.5%)を占める。太陽光発電に限れば、世界最大の事業者である。