生態系へのインパクトが大きいのは間違いない

全体の広さは620ヘクタール(東京ドーム約132個分)、改変面積は240ヘクタールだ。1ヘクタールは100×100mのことで、ざっくりいうと、幅2㎞×長さ3㎞の巨大な一団の土地にソーラーパネルを並べられるだけ並べようという計画である。ゴルフ場だと六つ分(108ホール)、サッカー場なら87面がとれる。完成後は約161メガワットの巨大発電所になるという。

ソーラー用地は、平面を効率的に造り出していかなければならない。ゴルフ場のようにアンジュレーション(地形の起伏)は生かされず、山を大胆に削っていく。周縁にある雑木林の高木はソーラーの表面に日陰をつくってしまうからすべて伐り倒す。

とにかく規模が大きく、壮観である(写真1-1)。

写真1-1 総面積620ヘクタールのメガソーラー(福島県西郷村馬場坂。2022年9月5日、著者撮影)。『サイレント国土買収 再エネ礼賛の罠』より
写真1-1 総面積620ヘクタールのメガソーラー(福島県西郷村馬場坂。2022年9月5日、著者撮影)。『サイレント国土買収 再エネ礼賛の罠』より

長年、私は林野庁で働き、こうした林地開発現場を歩いてきたが、人里近くでこれほど大面積の皆伐と土地造成を見るのははじめてだった。かつてのゴルフ場開発よりも伐り方が激しく、生態系へのインパクトが大きいのは間違いない。

ガイド役のK氏は、上海電力日本のほか、現地の事業会社「株式会社そら’p」(以下、「株式会社P社」という)と「NOBSP合同会社」(以下、「N合同会社」という)に兼務する饒舌(じょうぜつ)な方で、よく対応してくれた。地元議員が村議会で見境なく暴れることなどないよう、現地の説明責任者として最大限の配慮をしているように私には思えた。

(懸念があるというならすべて払拭する)
(しかし一言も聞き漏らさず、必要以上には決して話すまい……)

内心はうかがい知れなかったが、きっと上海電力側の3人は、皆がそのような気構えを徹底していたのだろう。

それゆえ、理由はよくわからないが、上海電力側の説明が一段落するたび、私たち5人が乗る車内には何とも言えない、いやーな沈黙が数十秒続き、それが何度も繰り返された。苦行のように思えた。

ガイド役のK氏は話をつなごうといろいろ気を遣ってくれたが、狭い車内のその重苦しい、微妙な空気が変わることはなかった。