「セフレはあり得ないとは言えなくなった」

相手役の一樹を演じるのは、7歳年上の青柳翔(劇団EXILE)。シーンを重ねるほど、息が合ってくるところがあったそうだ。

「初めて青柳さんとベッドシーンを撮るときは、少し緊張しましたね。ただ、お互い神経質なほうではなかったし、青柳さんは体格も大きくて『どんと来い!』という感じの方なので、私は脱力して完全に任せちゃっていて……。むしろ『先輩に対して気を遣わない人』みたいな感じになっていたと思います(笑)」

「セフレという状態でしか埋められない事情もある」 女優・行平あい佳が体現する、年齢を重ねた女性の切なさとエロス_4

男女のシーンとともに見どころなのが、親子共演だ。抄子と一樹が屋台で出会う女性を演じるのは、行平の実の母である寺島まゆみ。1980年代に「にっかつロマンポルノ」などで活躍し、女優、歌手、ラジオDJなどで人気を博した伝説的存在だ。

「母と共演できたのはうれしかったですね。しかも素敵なシーンでのおしゃれなカメオ出演でしたし、日活の作品で共演できたというのが、またうれしくて。撮影時はちょっとソワソワしましたが、先輩の胸に、思いきって飛び込んだ形でございます(笑)」

今回の作品は自身にとっては、どんな作品になったのか。

「原作にある感情の揺らぎを、うまく映画でも踏襲できたかなと思っています。だから見ると、心をくすぐられるところがあるはず。

初恋の人や好きだった人を思い出して、思わず連絡してしまう引き金になりかねない作品だと思うので、『初恋の人の連絡先を消してから映画館に来てください』と言いたいです(笑)」

人は、体だけの割り切った関係を続けることができるのか——そう深く考えさせる『セフレの品格』。
「セフレ」というテーマについては、どう考えたのだろう。

「『セフレ』という言葉に対しては、かなり印象が変わりましたね。今までは『セフレの関係だね』って、傍から見て揶揄するようなところがありましたけど、当事者からすると、『セフレ』という状態でしか埋められない事情もある。

抄子と一樹の関係性を体現してからは、『まったくあり得ないでしょ』とは言えなくなりました」

「セフレという状態でしか埋められない事情もある」 女優・行平あい佳が体現する、年齢を重ねた女性の切なさとエロス_5
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インタビュー後編では、助監督や絵コンテライターを経て女優になった行平の一風変わったキャリアや「ロマンポルノ界の聖子ちゃん」と呼ばれた母・寺島まゆみについて聞いていく——。

後編はこちら>>

取材・文/泊 貴洋
撮影/柳岡創平
場面写真/©2023日活
編集/一ノ瀬 伸

『セフレの品格 初恋/決意』(2023年)
監督・脚本/城定秀夫
原作/湊よりこ『セフレの品格』(双葉社 JOUR COMICS刊)
出演/行平あい佳、青柳翔、片山萌美、新納慎也
「初恋」:川瀬陽太、こころ、伊藤克信、寺島まゆみ、田中美奈子
「決意」:髙石あかり、石橋侑大、大嶋宏成
企画・製作・配給/日活

『セフレの品格 初恋』
36歳、バツ2のシングルマザー・森村抄子(行平あい佳)は、高校の同窓会で、初恋の相手で産婦人科医の北田一樹(青柳翔)と再会する。ホテルに誘われ、数年ぶりのセックスに快感を覚えたが、一樹から「セフレ」の関係を提案される。<R15+>

『セフレの品格 決意』
一樹は17歳の少女・山田咲(髙石あかり)と出会い、抄子にセフレの関係を終わらせることを提案する。失意の抄子が出会ったのは、23歳のボクサー・市原猛(石橋侑大)。猛と体の関係を持つようになった抄子だったが、一樹のことが忘れられないでいた……。<R15+>

『セフレの品格 初恋』7月21日(金)、『セフレの品格 決意』8月4日(金)、2部作連続公開
公式HPはこちら https://sfriends-pride-movie.com