母の仕事を知らなかった子どものころ
行平あい佳の母は、1980年代初頭に「ロマンポルノ界の聖子ちゃん」と称され、セクシーアイドルのはしりとなった女優・寺島まゆみだ。
『あぶない刑事』や『火曜サスペンス劇場』などのドラマにも出演し、歌手やラジオDJとしても人気を博した。1989年に結婚し、1991年に行平を出産してからは、ほぼ育児に専念してきた。
「母は忙しかったと思いますが食事もちゃんと作ってくれましたし、私をきちんと育ててくれました。母から直接『私の職業は俳優でしたよ』と言われたことなくて、うっすら感じ始めたのは、小学生のとき。
再放送か何かを見たんですかね。『2時間ドラマ出てない? 出てるよね!?』みたいな(笑)。ロマンポルノを見始めたのは、大学生になってからです。『すごい作品に何本も呼んでもらえて、すごい! カッコいい!』って、尊敬の念が先に立ちました。
母と似ているところは……全然ないです。母は私よりだいぶ小柄ですし、顔のタイプも全然違う。キャラクターも違うんですよ。母はいつもあっけらかんとしていて元気。私は高校生のころから『未亡人』って言われてましたからね。17歳なのに『27歳の未亡人』って(笑)」
幼いころから映画、ドラマ、アニメなどが好きで、「高校生のときには、何かしら映像に関わる仕事をしようと考えていた」という。そして早稲田大学入学後、映画サークルに入る。
「特に好きだったのは、大学2年生のときに見た『ツィゴイネルワイゼン』(1980年)。鈴木清順監督の画のキマり方がカッコよくて『これは映画でしかできない。総合芸術だ』と。
その後、大正浪漫3部作の『陽炎座』や『夢二』を見たり、清順監督のことを好きだと公言している韓国のパク・チャヌク監督(『オールド・ボーイ』『渇き』)の作品を見たり。
『セフレの品格』に入る前も、『お嬢さん』(2016年)を繰り返し見て、その繊細さやしなやかさに刺激を受けました。総合芸術点が高すぎる映画が好きです(笑)」