「五つの提言 」国の取り組み
22年9月、有識者会議は審議をまとめ、文科省に提言した。取り組むべき施策として、次の五つを挙げた。
① 特異な才能のある児童生徒の理解のための周知・研修の促進
➁ 多様な学習の場の充実等
③ 特性等を把握する際のサポート
④ 学校外の機関にアクセスできるようにするための情報集約・提供
⑤ 実証研究を通じた実践事例の蓄積
①は、教員の理解を深めることだ。オンデマンドの動画を活用した研修を挙げている。また、保護者の不安を和らげるため、相談したり情報交換したりする仕組みの検討を求めた。
②は、教室が居づらい児童生徒の場合、空き教室や学校図書館などで過ごしてもらったり、不登校生への支援のために設けられている校内の教育支援センターなどを活用したりすること。
③は、学校や教員らが児童生徒と対話しながら、それぞれの特性や抱える困難さに気づくことだ。先進的に取り組む大学の研究機関や民間事業者が使うツールやチェックリスト、査などを国が情報収集し、教育委員会や学校が活用できるように共有すべきだとした。
④は、学校の外で展開されているプログラムへの参加である。才能を伸ばす様々なプログラムがあり、国はその情報を集め提供するオンライン上のプラットフォームを構築することが重要としている。
⑤は、①〜④で挙げた実例を蓄積し、共有すること。さらに国は、こうした指導・支援を実証研究して成果をとりまとめ全国に展開し、学習指導要領や環境整備などの制度的改善についても進めるべきだとしている。
これを受け、文科省は23年度から、計約8千万円の予算を設け、支援策を始めている。
具体的には、才能がありながら困難を抱える児童生徒向けに、民間の支援団体などで行われているプログラムやイベントなどを紹介する。教職員の理解を深めるためどんな対応が必要かという動画を作成し、研修に生かしてもらう。⑤の実証研究も、各地の教育委員会や学校法人などと連携して進めるという。
日本でもエリート教育を進めるのでは、という私の懸念は杞憂(きゆう)だった。しかし、国の支援が、いま現在も困難を抱えている子どもたちや、不安を募らせている保護者の救いとなるのかは、心もとない。