僕はある部分では気が小さいんだけど、ある部分では神経が切れている。

――Twitterの人気の高さについて思うことはありますか。

最初は宣伝目的で始めたんですけど、ツイッターも書く欲求を吐き出す一つのツールだと考えていいんだと思ってやってます。そうしたらありがたいことにあれよ、あれよという間にフォロワーが増えていたという感じで。

妻からは「やめとけ」と言われながら、半分酔っぱらってよくのろけツイートをしてしまいます。リプでは「心温まりました」「癒やされました」って言ってくださる方もいますが、妻は「なんやこれ、ケッ」って思う人も絶対にいるからなって言うんです。僕も、その通りだと思います。だって、僕だって自分と同年代のオヤジがそんなつぶやきをしてたら、「何言ってるんだ。頭おかしいんじゃない」って思いますから。

まあ「ケッ」って思う人がいて当然で「佐藤二朗のTwitterは嫌い」という人がいるのが自然。それはそれでいいかなって思います。

――Twitterでは息子さんのこともかつてはネタにされていました。幼少期はウンコ、オナラ、チンチン、と一緒に喜んでいても、少しずつ成長してくると「お父さん、やめてよ」とはならないんですか?

完全になってますよ。たまに息子と商店街を歩いていて「お父さん、そろそろウンコ言おうか?」などと言うと「恥ずかしい」「もう、やめて」って言うんです(笑)。さすがに息子も大きくなり、ウンコもチンチンも喜ばなくなり、そこは嬉しさ半分、寂しさ半分ですが……。

精神年齢は完全に抜かれてしまい、息子も物心がついてきたので、息子のことは書かないように、と妻と約束してます。コラムなどで書くことがなくなると、どうしても自分の身の回りの話が多くなりますが、極力、息子のことは書かないようにしてます。

自称・精神年齢8歳の俳優・佐藤二朗(54歳)「ものすごい勇気を持って“ウンコ”ってつぶやいているわけではない。本当につぶやきたいから、心から漏れてるだけ」_4

――坂東彌十郎さんのことをどう呼ぶべきか迷われたり、酔ったなかで余計なツイートをして俳優仲間の山田孝之さんに注意されたりなんてこともあったみたいですが……。下ネタやノロケを自由にツイートすることは、自らをテンパリストでビビリと自認する佐藤さんにとっては勇気のいることではないですか。

たしかに以前、俳優仲間からも「佐藤二朗は気が小さい俳優。そこがいい」みたいなことを言われたこともあります。ただ、気の小さいビビリが、清水の舞台から飛び降りるみたいに勇気を出してツイートしているわけではなく、全然そこに勇気はいらないんです。
一般論になってしまいますが、気が小さい人とか、こういう人、ああいう人っていうのは本当に一概には言えないなって思いますし、僕はある部分では気が小さいんだけど、ある部分では神経が切れているっていうか。

そういう意味では、気が小さい部分と、神経が切れている部分の差が激しいんですかね。「気が小さい」ことにより、普段の生活では困ることがたくさんありますが、気が小さいからこそできる芝居があるかもだからいいやと自分を受け入れてます(笑)。でも、本当のところは自分ではわかりません。

ただ、ツイートに関しては、ビビりの人がものすごい勇気を持って「ウンコ」ってつぶやくわけではなくて、そこにはなんのハードルもない。本当につぶやきたいから、つぶやいてる。それだけのことなんです。


取材・文/栗原正夫 撮影/井上たろう スタイリスト/鬼塚美代子(アンジュ)
ヘアメイク/今野亜季(A.m Lab)

#2(後編)『「君の顔、便器に似てるね」「何を着ても作業服」…俳優・佐藤二朗の妻の残酷名言集。「Twitterやコラムを見てくださっている方では、僕より妻のファンのほうが多いんじゃないですかね」』はこちら

『心のおもらし』(朝日新聞出版)
佐藤 二朗
2023年6月20日
1,870円
344ページ
ISBN:978-4023322882
俳優・映画監督・脚本家、そしてバラエティ・教養番組のMCとして、その姿を見ない日はないほど幅広く活躍中の佐藤二朗氏。フォロワー数200万人超のTwitterは、ファンに笑いや安らぎのひとときをもたらし、仕事も家事も育児も世の中も、全ての疲れを吹っ飛ばしてくれると、ひそかな“中毒者”が増え続けています。本書は、そんな佐藤氏初となるコラム集。
Twitterでもおなじみ、意味不明のようで滋味すら感じられる「酔っ払いネタ」やオリジナリティが過ぎる「妻」の毒舌考、「永遠の精神年齢子ども論」などに加え、日々の出来事へのやさしくも鋭い考察、表現者としての“ジローイズム”が満載。また、衝撃的な未発表作品含む脚本5作も収録。未だ見ぬ「佐藤二朗」と、安心安全安定の(ちょっと不安で危険でもある)いつもの「佐藤二朗」と、あらゆる角度から出会えるであろう一冊です。
装画は、佐藤氏の永遠のバイブル『ザ・ワールド・イズ・マイン』の作者であり、出演映画『宮本から君へ』)の原作者、漫画家の新井英樹さんの描き下ろし。「つぶやき」の吹き出しも新井さん直筆という特別仕様。
内面は「永遠の約8歳児」とはいえ、いろいろ漏れてしまうお年頃。その中から、本書は「心」のおもらしに限定しているのでご安心ください。
吹き出したり、今日のモヤモヤ・イライラがどうでもよくなったり、一緒にとことんいじけてみたり、しんみりしたり、家族をいとおしく思ったり、佐藤二朗氏の出演作が何倍もおもしろくなったり。そうこうしているうちに、いつしか、あなた自身も感情をおもらししてしまうかもしれません。
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