薬物問題はセックスの話でもある
――【「いい子」の仮面の犯罪者】に出てくる沙織は、どちらかというと淡々としていて、テンションの高いところは描かれてなかった気がします。
あれは、要するにセックスの話なんですよ。覚せい剤はセックスドラッグなので、彼女は薬物の供給先でもある交際相手とひたすらセックスしてるわけです。ものすごい数の大人のおもちゃが転がっているような描写があったと思いますが、セックスそのもののシーンはないですよね。実は、プロットの段階ではもっとストレートでしたが、編集の岩坂さんや漫画家の鈴木(マサカズ)先生が他のケースとのバランスを考えながらネームを切ってくれました。本当にいい制作チームでやれているなと思います。
で、話は戻りますが、結局この(薬物)問題というのは、セックスが絡んでくるんです。
漫画に出てくる沙織も、セックス込みで相手の男にしっかり仕上げられていましたね。例えば覚せい剤の使用方法について尋ねると、「彼氏が買ってきたほか弁食べて、“1本いっとく?”ってシャブ打って、セックスしてから、(夜の)仕事に行ってましたね~」と淡々と説明するんです。これこそがリアルな現実です。
そして、いま私が懸念しているのは、性にまつわる問題やトラブルがさらに複雑化していること。LGBTQ+が取り沙汰され、いままでは男×女で区切れたものが、男×男、女×女、男も女も全部、と下半身の問題が多様化しています。
ただでさえ性の問題は介入する側にも高い技術が求められるのに、今後はますます多角的な視野で物事を見た上で、解決していかなければなりません。多様性を受け入れることは世界的な流れであり、みんな簡単に「受け入れます」と言っているけど、果たして対応できるだけの仕組みや制度、何よりも人間の知能がついていっているのか? と思うと、不安になります。
この問題は、世界的にちゃんと知恵を出し合って考えていかなければいけないことだと思います。
――薬物問題といえば、押川さんは2005年に『セックス依存症だった私』(新潮社)で、元DJのK子さんのエピソードを1冊にまとめています。
K子もとんでもない奴でしたけど、いまは大手企業でマネージャ職をしていて、すごい業績を上げてますよ。
――完全に社会復帰しているんですね。この本には、K子さんと電気グルーヴの交流についても記されていて、2019年にピエール瀧氏がコカイン所持で逮捕された際にも注目を集めました。
もう絶版になっていたので、メルカリで破格の値段がついてました(笑)。写真もたくさんありましたし、K子の証言を元に徹底的な調査をして、当時、静岡県警にチャート(相関図)まで作って、持っていったんですよ。そうしたら「警視庁の方でお願いします!」って、県警がビビっちゃったんです。