児童養護施設を舞台にしたフィクション作品の嘘
――『それでも、親を愛する子供たち』も、『「子供を殺してください」という親たち』と同じ制作チームなのでしょうか?
同じように原作を私が書いて、鈴木(マサカズ)先生はネーム原作。作画を鈴木先生のアシスタントの方が担当してくれます。児童養護施設を舞台にしたフィクション作品は割とありますが、もう嘘ばっかりなんですよね。
例えば、児童養護施設にいる子供たちには親の性行為を早くから見ていて、自分たちも本当に性の目覚めに早いんです。施設の職員も性教育はしますが、やるときは大人の目を盗んででも行為に走りますから、止められません。だから職員の方々は「どうやって止めるかよりも、(赤ちゃんが)できた時にどうするかを考えている」と言っていました。児童相談所からも、そのように指導を受けているそうです。
そんな現実があるなんて、誰も表立って言いませんよね。
――これまた、すごい話ですね……
それを覆させるには、いまの時代、漫画しかないんですよ。日本はさまざまな問題において、課題先進国です。例えば、他国の児童養護施設は親がいない子供達が基本ですが、日本は被虐待児童のほか、貧困家庭、親が刑務所に入っている、あるいは親が精神疾患という家庭の子供も多く受け入れています。それ自体はいいことだけど、諸外国の方はその入所理由を知って、「親がいるのに?」とびっくりします。
でもいずれは、諸外国も日本のような状況になると思うんです。日本をモデルとして、学んでいくのではないでしょうか。だからこそ日本は課題先進国として、真実を明らかにして議論を重ねていく必要があると考えています。
4月に発足した子ども家庭庁もそうですが、そもそも親のやっていることがでたらめなのに、それを美化してアピールしているだけ。この問題をちゃんと表に出さない限りは、社会では議論にはなりません。そういう意味では、やっぱり漫画という手法がいまは一番優れているんじゃないかと思います。
12巻【「いい子」の仮面の犯罪者】小末田沙織のケース
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取材・文/森野広明