児童養護施設を舞台にしたフィクション作品の嘘

――『それでも、親を愛する子供たち』も、『「子供を殺してください」という親たち』と同じ制作チームなのでしょうか?

同じように原作を私が書いて、鈴木(マサカズ)先生はネーム原作。作画を鈴木先生のアシスタントの方が担当してくれます。児童養護施設を舞台にしたフィクション作品は割とありますが、もう嘘ばっかりなんですよね。

例えば、児童養護施設にいる子供たちには親の性行為を早くから見ていて、自分たちも本当に性の目覚めに早いんです。施設の職員も性教育はしますが、やるときは大人の目を盗んででも行為に走りますから、止められません。だから職員の方々は「どうやって止めるかよりも、(赤ちゃんが)できた時にどうするかを考えている」と言っていました。児童相談所からも、そのように指導を受けているそうです。

そんな現実があるなんて、誰も表立って言いませんよね。

【漫画あり】「お母さん大好き!」前科8犯の覚せい剤まみれの母親の写真を飾っている子供の悲壮な叫び。なぜ美人キャバ嬢はドラッグに手を出したのか…薬物依存とセックスの切っても切れない関係_6
漫画で母親に欲情する息子のケースも描かれている

――これまた、すごい話ですね……

それを覆させるには、いまの時代、漫画しかないんですよ。日本はさまざまな問題において、課題先進国です。例えば、他国の児童養護施設は親がいない子供達が基本ですが、日本は被虐待児童のほか、貧困家庭、親が刑務所に入っている、あるいは親が精神疾患という家庭の子供も多く受け入れています。それ自体はいいことだけど、諸外国の方はその入所理由を知って、「親がいるのに?」とびっくりします。

でもいずれは、諸外国も日本のような状況になると思うんです。日本をモデルとして、学んでいくのではないでしょうか。だからこそ日本は課題先進国として、真実を明らかにして議論を重ねていく必要があると考えています。

4月に発足した子ども家庭庁もそうですが、そもそも親のやっていることがでたらめなのに、それを美化してアピールしているだけ。この問題をちゃんと表に出さない限りは、社会では議論にはなりません。そういう意味では、やっぱり漫画という手法がいまは一番優れているんじゃないかと思います。

12巻【「いい子」の仮面の犯罪者】小末田沙織のケース

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【漫画あり】「お母さん大好き!」前科8犯の覚せい剤まみれの母親の写真を飾っている子供の悲壮な叫び。なぜ美人キャバ嬢はドラッグに手を出したのか…薬物依存とセックスの切っても切れない関係_7
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取材・文/森野広明

『「子供を殺してください」という親たち』12巻(新潮社)
原作:押川剛 漫画:鈴木マサカズ
【漫画あり】「お母さん大好き!」前科8犯の覚せい剤まみれの母親の写真を飾っている子供の悲壮な叫び。なぜ美人キャバ嬢はドラッグに手を出したのか…薬物依存とセックスの切っても切れない関係_8
2022年11月9日
726円
192ページ
ISBN:978-4107725431
押川剛率いる(株)トキワ精神保健事務所は、病識のない統合失調症やアルコールや薬物の依存症、精神疾患の疑いのある長期ひきこもりなどの対象者を説得し、医療につなげている。前巻に続いて、親を使役しようとした息子の話では、引きこもりの原因を解明し自立の道へ――。そして押川の転機になった歌舞伎町のエピソードも収録!
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