2万円超の『VIPチケット』が提供するものとは?
ところで準決勝4試合のうち、このバルセロナ―チェルシー戦だけは記者としてではなく、一般客として観戦した。
もちろん他の3試合と同じように、バルサに対しても事前に取材申請を行っている。しかし大一番とあってスペイン内外のサッカーメディアから申し込みが殺到したのか、どういうわけか申請が却下されてしまったのだ……。ならばとクラブの公式サイトで売り出されている同戦のチケットを片っ端から調べてみると、こんなカテゴリーを見つけた。
【VIPチケット】〈プレーヤーズ・ゾーン〉
・カンプ・ノウで最高の位置にある、心地よい座り心地のシート。
・プレーヤーベンチのすぐ横で観戦する臨場感。
・スタジアム内のVIPラウンジへ通じる、専用エントランスからの入場。
・試合開始1時間半前から試合終了1時間後まで、豪華な飲食を御提供。
場所はメインスタンド1階中央の最前部で、気になる価格は149ユーロ(約2万2千円)。対チェルシー戦で最も安い3階スタンド席が13ユーロ(約1900円)であることを思えば、破格の料金だ。
ただ変動価格制を採っているカンプ・ノウでは男子チームの試合、例えば女子のチェルシー戦4日前の4月24日に行われたアトレティコ・マドリード戦となると同じ〈プレーヤーズ・ゾーン〉のVIPチケットが1350ユーロ(約19万8700円)に設定されていたので、それを考えるとリーズナブルだともいえる。
記者として取材できないのなら観客としてめったにできない体験をしてやろうと、思いきってこのチケットの購入を決めたのだが、これが大正解だった。欧州女子サッカーシーンの知られざる一面に触れることができたのだ。
外光を取り入れるモダンな内装の広いVIPラウンジに通されると、壁に沿って各種ケータリングを提供するコーナーが設けられているのが見える。ドリンクはビール、赤・白・スパークリングのワインが飲み放題。
フードは、その場で原木から削いでくれる生ハム(ハモン・イベリコなのかどうかは聞きそびれた)、ピンチョス系の各種つまみ、目の前で作ってくれるホットドッグ、さらには中華風焼きそばやカツサンド(説明札にローマ字でKatsu Sandoと書いてある)まである。
そしてスタンドに用意されているVIPシートは、クッションが入ったふかふかのものだった。謳い文句通り、ピッチ上のチームベンチがすぐそばにある。
スタジアム開門前の熱狂的な盛り上がりもあり、僕はこの試合で、女子サッカーの最多観客動員記録が更新されるのを期待していた。ところがスタンドを見渡すと、3階部分には空席が目立つ。アウェー戦で圧倒的な実力差を見せつけたので、「わざわざ自分がカンプ・ノウに出向いて声援を送るまでもないか」と考えた地元サポーターが多かったのだろうか。