「世界一アクティブな女性コミュニティへ」というビジョンを掲げ、昨年9月に開幕した「WEリーグ」。スポーツ界に蔓延するジェンダー課題解決への取り組みを進めてきたが、一方で、予算難による試合数の減少、集客難、秋春制移行によるイレギュラーな日程の組み方など、課題も多い。

現場が直面している問題について、4月上旬に当サイトに寄稿したところ、記事が配信された翌日、WEリーグ事務局から一通のメールが届いた。

「記事を拝読しました。チェアとお会いいただく機会を頂戴できないでしょうか」。

送り主は、現場で各クラブとの折衝を続けてきたリーグの女性広報。「チェア」とは、WEリーグのトップで、日本サッカー協会(JFA)副会長でもある岡島喜久子氏のことだ。早速取材を申し込むと、快諾の返答。岡島チェアは現状の課題をどのように受け止め、リーグの未来図を描いているのかを伺った。

「公式戦の数が少なすぎる」

WEリーグでは、クラブの参入要件として、プロ選手の最低年俸や人数、スタジアム基準などを設定している。そうした中で膨らんだ予算に対し、コロナ禍の集客難がクラブにさらなる負担を強いた。

また、試合数は1チームあたり年20試合と少ない。それはチームの継続的な強化を困難にする上、コンスタントに試合が行われないためにリーグの認知度もなかなか上がらない。試合数を増やすためにも、今後はリーグ全体の予算を増やすことが急務となっている。

――リーグは1年目が終わりましたが、現場からは「公式戦の数が少なすぎる」との声が上がっています。プロ化によって1チームあたりの予算は大幅にアップしましたが、強化と興行の両面で難しいマネジメントを強いられています。その要因を改めて教えていただけますか。

興行の面では、当初の予想よりも支出が多くなりました。特に、DAZN(ダゾーン)で放映していただく全試合の公式映像製作費に予算をかけています。これは、プロ化に伴い、カメラ台数や実況・解説をつけ、選手たちのプレーをファンにしっかり伝えるためです。

予算、集客、春秋制…女子サッカー「WEリーグ」の理想と現実_a

――JリーグはDAZNと2017年から28年までの12年間で約2,239億円の契約を結びましたが、WEリーグは?

Jリーグは放映権料の黒字分が各チームへの配分金になっていますが、WEリーグはそこまでには至っていない状況です。


――JFA(日本サッカー協会)主導で立ち上げられたリーグですが、1年目から予算が足りなくなったのはなぜでしょうか。

JFAからは4年間で8.5億円の補助金が約束されていて、その他に、トップリーグ連携機構からの補助金と、各クラブからの年会費(1チームあたり2,000万円)をいただいています。パートナー収入は、電通とマーケティングのパートナーシップを結んでいるため、一定の財源は保証されています。

これに対して支出は、クラブに対する分配金(1チームあたり4,000万円×11チーム)と公式映像制作費で半分近くを占めたのが要因です。