地物中心の創作料理でおもてなし
夕飯はもちろん、囲炉裏の前で。前菜は、鹿の生ハムに、ニリンソウやカタクリ、甘草など充さんが近所で採った山菜のおひたし。タラの芽、昆布と夏ミカンの皮の天ぷらなど地物野菜を中心に創作料理が次々と出てくる。
メインディッシュは、囲炉裏でいぶしたサバ。「温かいうちにお食べ」と久美子さん。日常の延長線上にあるおもてなしを受けながら、どこか懐かしさを感じる夕食だ。
囲炉裏の前で夫妻と一緒に夕食を食べながら会話に花を咲かせて、気がつけば4時間以上経っていた。苫屋は時間の流れが止まったような感覚になる、不思議な空間だ。
苫屋の受け入れ人数は最大14人(3部屋)。春先などの寒い時期は各部屋にヒーターも完備されている。トイレは洋式水洗で、風呂は共同ながら十分な広さがあり、江戸時代末期の建物ながら水回りはリフォーム済みだ。
チェックイン・アウトの時間の指定は特になく、朝ごはんの時間も宿泊客のスケジュールに合わせてくれるため、決して早起きしなければいけないというわけでもない。
翌朝、朝食の支度をする充さんに「毎朝何時に起きているのか」と尋ねると、「時計と付き合ってないから決まりはないね」と一言。都会の喧騒や忙しさを忘れさせてくれる、ゆったりとした時間が苫屋には流れている。
朝ごはんは、夏ミカンのサラダ、エゴマの葉で巻いたソーセージ、エゴマパン、焼き卵。100年もののミルで挽いたコーヒーとともにいただく。