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手紙を書くところから始まる旅

岩手県野田村にある民宿「苫屋」。電話受付もインターネット予約もできない。手紙やはがきでのやり取りでしか予約を受けつけていない。

まず、手紙を書くところから旅が始まる。第3希望までの宿泊日を書いた手紙に返信用のはがきを同封して送った。

約1週間後に届いた返事には、確定した日程とアレルギーなどの有無の確認、そして「道中も楽しまれて」というメッセージが書かれていた。

【宿泊体験記】予約は手紙のみ、文明から離れた“不便な宿”が国内外にファンを持つ理由とは? 「孤独から離れに来るのかもしれない」_1
手紙で宿泊予約と今回の取材依頼を行った
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返事には日程や料金などが記されていた

岩手県野田村は盛岡市から車で約2時間半。東京都内から公共交通機関を使って行くには新幹線がおすすめだ。

東京駅から青森・八戸駅まで東北新幹線に乗り、JR八戸線とNHK連続テレビ小説『あまちゃん』で有名な三陸鉄道リアス線で南下し、苫屋の最寄り駅「陸中野田駅」まで行く。乗り継ぎの時間も合わせて、陸中野田駅に着いたのは東京を出発してから約6時間後。そこからタクシーで約20分山道を登った先に苫屋はある。

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東京から宿へは電車やタクシーを乗り継いで6時間以上

「苫屋」と書かれたのれんをくぐり建物に一歩入ると、心地いい香りに包まれる。宿の中心の板の間には囲炉裏があり、その上の大きな梁(はり)は黒くすすけている。パチパチと弾ける薪の音と、温かいオレンジの火の光で部屋が満たされていた。

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岩手県野田村の山奥にたたずむ苫屋
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静かな室内に囲炉裏で炎が燃える音が響く

宿を営む坂本充さん(63)・久美子さん(65)夫妻の出迎えを受けながらチェックイン。出された決明子(ケツメイシ)のお茶と干し柿で、まずは長時間移動の疲れを癒す。

取材をした4月中旬の野田村の気温は10℃台前半。夜は真冬のように寒いため、充さんが昔懐かしい紺色のはんてんを貸してくれた。

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苫屋を営む坂本充さん、久美子さん夫妻