就活メディアとInstagramは似ている?

――そのほか、昨今の就活メディアに対する懸念点はありますか。

昨今の就活メディアは、就活生の期待水準をむやみに吊り上げているのではないかと懸念しています。

例えば、内定をいくつも獲得する優秀な就活生のエピソードを紹介することで、今まさに就活している学生が「自分でも内定をたくさん取れるかも!」と過信したり、成果を期待しすぎたりするデメリットもあると思います。

期待水準を上げ過ぎてしまうと、現実とのギャップに苦しみ、ますます就活が苦しくなってしまうのです。

――まるでInstagramの「キラキラ女子」に劣等感を感じて、現実とのギャップに苦しむ人のようですね。

両者とも構図は同じです。メディアを通じて特別に優れた人物やその生活を知ってしまうと、現状に満足できなくなり、普段の生活に苦しみを感じてしまう。就活に限らず、この現象は社会のさまざまな場面で発生しています。だからこそ、期待水準を上げすぎずに「足るを知る」ことが重要かもしれません。

――そうしたなかで、期待水準を上げ過ぎずに就活するにはどうしたらよいのでしょう。

例えば、就活における期待値を調整する役割を果たしているのが、エージェントサービスです。近年、就活生向けのエージェントサービスが一部の就活生の間で利用されるようになっています。

「就活 つらい」という学生の期待水準を上げてしまう就活メディア。100年以上前から就活本は「最近の若者はダメだ」と書き続けているのに_3
すべての画像を見る

彼らは就活生と企業の間に立って両者をマッチングしますが、その過程で就活生の期待水準を調整する役割も担っています。つまり「あなたの実力なら、このあたりの企業が妥当ではないですか?」とアドバイスすることで、就活生の期待水準を修正し、無用な失望を遠ざけているわけです。

このように、客観的な第三者からのアドバイスを通じて、正しい自己認識をすることは決して悪いことではありません。これは婚活やその他のマッチングサービスでも同様でしょう。パーソナルなつながりのなかで自らの期待水準を調整していけば、今日のメディア環境のなかでも平穏に暮らしていけるのではないでしょうか。

取材・文/島袋龍太

#1「“就活 つらい”の原因は1990年代に定着した自由応募方式のせい!? 
自己責任の就活がもたらす選択の自由と内定格差」はこちらから