国際大会で初優勝を経験

GPシリーズ・スケートアメリカでいきなり好成績を収める。

リズムダンス(RD)は課題のラテンダンス『コンガ』で艶めかしい色気を匂わせている。体の奥から生きる喜びが湧き上がってくるようなダンスで、呼吸もぴったり。

黒を基調に原色が散りばめられたふたりの衣装が混ざり合うと、野性のパワーに満ち、69.67点というスコア以上の期待感だった。

フリーダンスは『オペラ座の怪人』で、この時点で完成度の高い世界観をつくり出していた。怪人ファントムと歌手クリスティーヌの倒錯した愛が、氷上に描かれる。

100.01点は辛口のジャッジで、観客のブーイングが出たほどだ。

続くチャレンジシリーズ・デニステンメモリアルチャレンジでは、スケートアメリカのスコアを軽々上回った。RDでは79.56点と自己ベスト、フリーでも108.74点と大躍進。トータル188.30点で、国際スケート連盟(ISU)公認の国際大会で初優勝を果たした。

顕著な変化が見えたのは、昨年11月のNHK杯だった。

「スケートアメリカ、デニス・テンは2試合連続で調子がよく、何も考えずに挑めたんですが、NHK杯はタイミングが合わないところがちょこちょこあって。

プログラムを通して最後まで滑り切る体力が必要で、リズムダンスはまとまってきましたが、フリーは(内容を)かなり変えているのでまだ数をこなせていなくて」

高橋はそう語って、苦戦の理由を明かしていた。シーズンスタートの出遅れのツケが出て、アメリカでのハリケーン被害もあり、練習に支障が出た。本調子ではなかった。

しかし、大きく崩れてもいない。

「うまくいかないながら、調整したパフォーマンスになりました。公式練習、ウォーミングアップ、本番と、ひとつやるごとに修正できたのは収穫です。100%じゃなくても、それに近いものを出せたのは成長かなと思います」

そう語った高橋は、3年目の手応えを感じていた。

上位が集うグループでの5分間練習では、独特の気配があった。それぞれのカップルがギリギリまでコースを譲らず、何度かぶつかりそうになっている。

「あれはけっこう怖かったですね。ロシア勢が抜けて、誰にでも表彰台のチャンスがあったんでピリピリしていて。

自分たちは氷に乗ったら集中が一番ですが、トップ選手のエネルギーを感じながら、自分たちにもエネルギーがあると思いました」

村元の言葉にも、培ってきた自信がにじんでいた。

結果は、178.78点で総合6位。日本勢ではトップだった。調子が悪いなりに、滑りをまとめられたのは成長だ。