600億円以上、日本から韓国の本部に振り込まれている…まるで振込詐欺集団のように、綿密なチーム体制で行われる統一教会の霊感商法。若者もハマるロジックとは_3
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まじめで潔癖

ではどんな人びとが、統一教会に引き込まれるのだろうか。きっかけは、街頭のアンケート調査とか、友達にビデオ・セミナーに誘われたとか、いろいろであろう。

総じて言えば、統一教会に引き込まれるのは、まじめで知力の高い若い人びと、つまりごくふつうの人びとである。

統一教会は、性にこだわり、性が堕落と罪の始まりであるとし、純潔を強調する。消費社会の爛熟や歪んだ性文化に眉をひそめるタイプの若者は、この教えに共感を覚える。

また統一教会は、聖書の解釈というかたちで、体系的な世界観を提供する。キリスト教や聖書になじみのなかった若者は、キリスト教っぽい外見を真に受けて、その教義を受け入れてしまう。

統一教会は、部活やサークルのノリがある。信徒を増やすことは、組織の目的でもあり信徒の実績にもなるので、みなとても親切だ。

有田芳生『改訂新版 統一教会とは何か』(2022年、原著は1992年)は、献身(専従者となること)してニセ募金や霊感商法に日々を送った当時の、元信徒の日常を生々しく描いている。

それは洗脳なのか

アメリカでキリスト教系カルトの反社会的事件が問題になり、教団から連れ戻した若い信徒を「脱洗脳」する専門家が現れた。キリスト教の牧師らや、ソ連の洗脳の技術に詳しい臨床心理学者らである。

カルト宗教が人びとを信じさせるのが洗脳なら、信じさせられた人びとに責任はない。でもそのかわり、信徒であった当時の人格は、本人の人格と認められないことになる。

これはこれで、辛いものがあるだろう。

統一教会の場合、人格改造セミナーのような技法を使うとは言え、洗脳であるとは言いにくい。それは、宗教の枠内にとどまっており、本人の納得と同意にもとづいて、教団の活動に従事させている。本格的な洗脳の技法で、本人の人格を操作しているとまでは言えない。

それなら、統一教会の反社会性は、どこにあるのか。それは、統一教会が、「地上の神の王国」という、経済と政治と宗教にまたがる閉じた世界観を提供し、その内部に信徒を閉じ込めるところから生まれている。

統一教会が提供するのは、社会集団(仲間の世界)=世界(世界観)という閉じた世界であり、その世界を、再臨のメシア(文鮮明)が主宰している。信徒はそこで、生きる意味と価値を与えられる。よってそこから、抜け出すことができにくくなる。

この閉じた世界は、信徒から、時間とエネルギーと金銭を吸い上げる。信徒がそれを提供しておかしいと思わないのは、そうした貢献は、意味があり、価値があり、「地上の神の王国」を実現させるためである、と信じるからだ。

「地上の神の王国」が実現するなら、そうした努力と献身は報われる。「地上の神の王国」は、甲子園やインターハイが大がかりになったようなものなのだ。


*統一教会(世界基督教統一神霊協会)は、現在は、世界平和統一家庭連合と名前を変えています。新聞などは「旧統一教会」と表記しますが、本稿では歴史を尊重して、統一教会(Unification Church) と呼ぶことにします。


文/橋爪大三郎  写真/©shutterstock

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日本のカルトと自民党 政教分離を問い直す
橋爪 大三郎
600億円以上、日本から韓国の本部に振り込まれている…まるで振込詐欺集団のように、綿密なチーム体制で行われる統一教会の霊感商法。若者もハマるロジックとは_4
2023年3月17日発売
1,276円(税込)
新書判/368ページ
ISBN:978-4-08-721257-0

統一教会、日本会議…
宗教社会学の第一人者がタガの外れた政教癒着を警告

日本人は、宗教の訓練が足りない

◆内容紹介◆

カルトが日本を、蝕んでいる。安倍晋三元首相暗殺を機に、統一教会が自民党に喰いこんでいた実態が明らかになった。
だが、病巣はもっと深い。統一教会以外の宗教勢力も自民党に隠然と影響を与えている。

なぜこんなことになってしまったのか? 

原点に立ち戻り、政治と宗教の関係を考え直す必要がある。政府職員も市民もカルトの正体を見抜く基礎知識を身につけよう。そして政教分離の原則を改めて体得しよう。本書は宗教社会学の第一人者がカルト宗教の危険性を説き、民主主義と宗教のあるべき関係について、基本から明快に解説する。

◆識者の評◆
オウム事件や統一教会問題を経験した日本でもっとも必要な知識がここにある。――有田芳生氏(ジャーナリスト/『改訂新版 統一教会とは何か』著者)

当代随一の泰斗が、その尋常ならざる「読む力」と「書く力」の双方を注ぎ込んだ本書は、今後「政治と宗教」の議論に参加する人々にとっての、ひとつの確かな羅針盤になるに違いない。――菅野完氏(著述家/『日本会議の研究』著者)
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