マンション管理組合の役員を経験したことがきっかけ

——「マーガレット」で連載されていた頃から、たくさんのファンがいらっしゃると思いますが、今、先生の中でファンの方はどういう存在ですか?

「距離の離れたところにいる味方」という感じですかね。私は、読んでくれる人がいなかったら、たぶん漫画を描いていない人間なんです。読んでいる人が1人でもいるなら描ける意識なんです。だから感想のお手紙が欲しいんですけれど、『ハツカレ』のときに比べると、なかなかいただけなくて。

——(担当編集)掲載誌の対象年齢が低いほどたくさん届くので、「クッキー」よりは「マーガレット」や「りぼん」のほうがお手紙は多いです。

そういうことなんですね。たまに、すごく分厚いお手紙をいただくことはあります。

——手紙をもらうと「味方がいるな」とわかるのでしょうか。

全部肯定してくれる手紙が欲しいわけではないんですよね。「ここは違うと思う」とか「私とは相いれないキャラだと思います」でもいい。「何かを思った」ということが知りたい感じです。

でも今は「描きたいから描いている」という部分がだいぶ大きくなってきましたね。半々かな。『200m先の熱』は、読んでいる人がいなくても描いているかもしれない、という気がします。

——なぜそう思うようになったのでしょう。

やっぱり、集大成だと思っているからですね。『菜の花の彼-ナノカノカレ-』を描いているときに、マンションの管理組合の役員がまわってきちゃったんですよ。

——まさに『200m先の熱』の紬と平良と同じ状況ですね。

そうなんです。時間も取られるし、『菜の花の彼-ナノカノカレ-』が最終回に向けて大変なときだったのもあって、すごくやるのが嫌で(笑)。でもやってみたら、いろんな立場の人がここで生きていて、いろんな考えの人がマンションを支えていることがわかったんですよね。頑張らないと一つの集合体は維持できないんだなと。そういったマンションもたくさんあって、街として見るとさらに大きい集合体になる。なにより役員をしているときに災害もあったりして。いろいろと考えさせられることがありました。

そこから何となくこういう漫画を描きたいなと思い始めて、4年ぐらい経ったときに、「マーガレット」で鉄骨ともう一本やりませんか?と言っていただいたんですが、ここで大人向けの漫画誌に移行して、それを描きたいと思いました。先ほども言ったように、恋愛だけではなくて「今の時代で生きていく」ということを描きたいなとも思いましたね。