“三世”こそが主流の政治家ファミリー

親の七光だけでなく祖父の七光までも武器に。俳優&政治家の三世はスターか? 凡人か? 妖怪か?_5
祖父、父ともに政治家の安倍晋三
代表撮影/ロイター/アフロ
すべての画像を見る

最後に、偉大な祖父、著名な父の跡を継いで頂点に上り詰めた人物を主人公とした映画をご紹介しよう。ただし、ここでの“三世スター”は、俳優ではなく政治家だ。

第90代・96代・97代・98代総理大臣として、合計で8年9カ月という史上最長期間君臨し、2022年7月に第26回参議院議員普通選挙の応援演説中に狙撃されて死亡した安倍晋三は、政界における最も成功した“三世スター”であることは間違いない。

彼の祖父であり“昭和の妖怪”のあだ名で知られたのが第56代・57代総理大臣である岸信介。ドキュメンタリー映画『妖怪の孫』(2023)では、祖父が果たせなかった憲法改正を前のめりに推し進めようとした政治家として、安倍晋三を描いている。

父は岸の娘婿で、内閣官房長官、自民党幹事長などを歴任し、首相の座の目前まで行って病死した安倍晋太郎。義父である岸信介ではなく、非戦・平和主義で知られた実父・安倍寛(衆議院委員)の子どもであることを自らのアイデンティティとして重視していた。

父とは対照的に、晋三は母方の祖父との繫がりを重視していたように思えるが、その詳細はぜひ映画館で『妖怪の孫』を見て確かめてほしい。

日本の政界では、麻生太郎も小泉進次郎もみな“三世”なのだが、麻生太郎に至っては祖父が吉田茂元首相、曽祖父が明治時代に内大臣など務めた牧野伸顕。そのまた父は明治維新の立役者のひとり大久保利通だから、日本の政界の血統主義や、恐るべしだ。

俳優であっても政治家であっても、“七光”だけで活躍できるほど簡単な世界ではない。
一人前としてキャリアを伸ばせるかどうかは、やはり本人の才能や努力次第。存在だけで注目を集める彼らは、生き方や仕事ぶりがシビアに試されているのかもしれない。


文/谷川建司