ロックダウン下だからこその恋愛のあり方とは?
人と人とのリアルな接触が限られたコロナ禍では、映画の中で描かれる恋愛の在り方も様変わりした。『ソングバード』では、ニコとサラは互いに恋愛感情を高めていくが、ふたりのやりとりはスマホの画面越しのみで行われ、免疫保持者と非保持者は外気に晒される中で触れ合うことはできない。
『ピンク・クラウド』のカップルは互いに知り合ったばかりだが、それでもやがて倦怠期が訪れて、家庭内別居となる。ヤーゴは性的欲求の処理をオンライン風俗システムに頼るようになり、それを隣室で聞いていて腹を立てたジョヴァナは、ヤーゴの絶頂の直前に通信を遮断する。
男と女が出会い、恋に落ち、結ばれる。そんな当たり前の恋愛は、ロックダウンという非日常の制約の中でこそ、よりドラマティックに描かれたとも言える。
そもそも、密閉空間に閉じ込められた人々がいかにしてサバイブするか、というシチュエーションは、昔からパニック映画でさんざん描かれてきた。しかし、実際にロックダウンを経験した世界中の映画作家たちが、強い制約の中で様々なストーリーを描いたのは、非常にスリリングなことだった。
“ロックダウン映画”という新ジャンルは、世界を一変させたコロナ禍が生んだ、唯一の功名だったのかもしれない。
文/谷川建司