クリエイティビティを炸裂させたカルト映画

映画が生まれて128年。「すべての映画は過去のいずれかの映画の模倣である」と誰かが言ったが、確かに意識しているかどうかにかかわらず、どんな映画作家でも自分が影響を受けた作品というのはあるはず。模倣か、インスパイアされたか、トリビュートしているかは別として、過去の作品との関わりはあるものだ。

だが、ごく稀に、ほかのどんな作品にも似ていない、ちょっとフツーではない映画に出くわすことがある。人はそういった映画のことをカルト映画と呼ぶが、何がそれらの作品をカルトたらしめているのか? 
今回は悪趣味で、グロテスクで、しかし美しい、そんなカルト作品をご紹介しよう!


『ノベンバー』(2017)November 上映時間:1時間55分/ポーランド・オランダ・エストニア

グロテスクなのに美しく、クレイジーなのに感動的! 奇妙奇天烈なカルト映画5選_1
『ノベンバー』10月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
©Homeless Bob Production,PRPL,Opus Film 2017
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現在公開中の『ノベンバー』は、エストニアの寒村を舞台とした、シュールで摩訶不思議な世界観の怪作。

11月の「死者の日」。村に戻ってきた死者は家族を訪ね、一緒に食事をし、サウナに入る。精霊、人狼、疫病神が徘徊する中、貧しい村人たちは生意気な精霊“クラット”を使い、隣人から物を盗みながら、極寒の暗い冬を乗り切るべく思い思いの行動を取っていた。そんな中、村の青年ハンス(ヨルゲン・リーク)は、領主であるドイツ人男爵の娘に恋焦がれるあまり、森の中の十字路で悪魔と契約を結んでしまう……。

主人のために常に仕事をこなす精霊“クラット”の存在や、11月1日の万霊節に白装束の死者たちが列をなして村に戻ってくる風習など、そのアニミズム的な感覚は日本の土着信仰とも相通ずる。

クラットは釜や斧や頭蓋骨などで作られており、その姿は一つ一つ異なり、農器具として働いたり、隣家から家畜や食料を盗んできたりする。

いわば、生命以外のものに生命を吹き込んで使役に用いるという風習なのだが、ときには雪だるまをクラットにして、知恵を借りたりもする。やることがないとクラットは「仕事をくれ!」と主人の顔に唾を吐いたりも(笑)。

CGに頼らず、あえて細いワイヤーを駆使してクラットを操るアナログな演出(監督:ライナー・サルネ)は、ホラー・ファンタジーに、確かなリアリティを与えている。さらに、モノクロームの映像(撮影:マート・タニエル)は、フツーじゃない摩訶不思議な世界観に絶妙にマッチ。まるで夢を見ているような、幻想的な映像美は必見だ。