創作は神聖で、信仰のようなもの

「“こんなひどい世界、終わっちゃえ”と何度も思った」紀里谷和明監督が“遺作”に込めた、社会に対する深い絶望_3
主人公のハナに影響を与える老婆を夏木マリが演じた
🄫Kiriya Pictures
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──監督はこの映画が最後の作品と公言されていますね?

今の映画業界は、原作や企画があって、マーケティング優先で作られている。映画監督は、それを実現する現場監督みたいなものになっています。しょうがないですよね、ビジネスだから。

でも僕にとって創作は、すごく神聖で信仰のようなものなんです。でも、信仰するためにはまずはビジネスとして成立させなければいけない。なぜなら映画はお金がかかるから。そこが映画の不幸なところだと思います。

もちろん、マーケティングを凌駕するような強烈なものを作って、多くの人に見てもらえれば、作家性は成立するかもしれない。作家も試されているとは思っていますが、どう考えても、世界の映画業界を見ると僕があまり関わりたいと思う方向にはいっていない。マーベルの新作を誰が監督したのか、名前を言える人は少ないでしょう? 

そういう流れの中で僕自身、創作が好きなのかすらわからなくなってしまったんです。ものすごく恋人を愛しているのに、一緒にいるとどうしても苦しくて辛いという状況、あるじゃないですか。それと似たような感覚。だから一度、きっぱり別れて距離を置きたいと思っています。

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『世界の終わりから』(2023) 上映時間:2時間15分/日本

「“こんなひどい世界、終わっちゃえ”と何度も思った」紀里谷和明監督が“遺作”に込めた、社会に対する深い絶望_4


高校生のハナ(伊東蒼)は、事故で親を亡くし、学校でも居場所を見つけられず、生きる希望を見出せずにいた。ある日突然訪れた政府の特別機関と名乗る男(毎熊克哉)から自分の見た夢を教えてほしいと頼まれる。心当たりがなく混乱するハナだったが、その夜奇妙な夢を見る……。

4月7日(金)より全国公開
配給:ナカチカ
公式サイト:https://sekainoowarikara-movie.jp/#
🄫Kiriya Pictures

取材・文/松山梢