「『CASSHERN』は完璧ではなかった」紀里谷和明インタビュー#2はこちら

ヒロインの叫びは、僕の叫びでもある

「“こんなひどい世界、終わっちゃえ”と何度も思った」紀里谷和明監督が“遺作”に込めた、社会に対する深い絶望_1
伊東蒼が演じた主人公のハナ
🄫Kiriya Pictures
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──映画『世界の終わりから』(2023)を試写会で見た人からの反響がすごいですね。

シンプルな話ではあるんですが、構成が複雑なことになっているので「わかんない」で終わっちゃったらどうしようという不安がありました。だから見ていただくまではものすごく緊張していたんです。でも(映画にも出演している)岩井俊二監督がすごく褒めてくれたし、Twitterでもいろんな人たちから反響がありました。伝わったという感触があって嬉しかったです。

──主人公は事故で両親を亡くし、生きる希望を失いかけている女子高生のハナ。ある日突然、2週間後に終わる世界を救う使命を託されるものの、人々が繰り広げる争いを前に、この世界は救われるべきなのか? と葛藤します。「こんな世界なくなればいい」というハナの叫びは、そのまま監督の叫びのようにも思えました。この映画の製作の原点から教えてください。

2004年に発表した『CASSHERN』から、ずっと僕は絶望と不条理について考え続けてきました。それは今も変わりません。世界情勢を見ても日本の政治や経済や教育を見ても、あらゆることに絶望してしまうんですね。果たしてこの状況は、ハナのような中高生たちにどう見えているだろうと思ったんです。

無意味なルールや価値観で子供たちを縛ろうとするし、異質なものを排除していく力学が働いている。その延長線上にある社会が効率化を推し進めたあまり、人間は感情があるはずなのに、データやリソースに成り下がってしまった。それでは心は壊れますよね。

現実として、若年層の死因の第一位は自殺です。それは何も日本に限った話ではなく、アメリカのティーンエイジャーの3割以上が、真剣に自殺を考えたことがある、もしくは考えているというデータがあります。ということは、やはりそこには孤独や絶望があるわけです。

僕のTwitterで「世界が終わったほうがいいと思ったことがありますか?」とアンケートを取ったところ、約65%の人が「YES」でした。世界が終わっちゃえば嫌いな学校に行かなくてもいいし、会社にも行かなくていいですから。

──監督も思ったことはありますか?

あります。「こんなひどい世界、終わっちゃえ」って、何度も思いました。だからハナの叫びは僕の叫びでもあります。