あまり知られていない「正確な数値を示す」コツ
——本書では、ビジネスシーンで活かせる研究者の考え方やノウハウをいくつも紹介しています。その中で特に、多くの人が使えそうなノウハウを教えてください。
2つ紹介させてください。
まず1つは「正確な数値を示す」ことです。
大前提として、人を説得するためには数字で語る必要があると思います。何か量を説明しようとする際に「『著しく』大きい」や「差は『わずか』だ」といった、形容詞を使っていませんか? 形容詞はあくまでも「主観」であり、形容詞を使って無意識のうちにデータを意図的に誘導してしまう危険性があります。
また、データ分析も「正確に」できているでしょうか。例えば、自社製品を利用する顧客に対してアンケートを実施したとき、調査の「母集団(調査対象全体のこと)」に当たる利用者全員へはアクセスできないので「標本(調査対象から選び出された調査可能な集団のこと)」のデータを集めるでしょう。
この標本の平均値を取るだけではなく、より詳細な分析のためには「不偏標準偏差(母集団のバラツキを推定する統計手法のひとつ)」を用いる必要があります。
また、回収したデータ自体が、平均値を中心とした「正規分布」かどうかも確認する必要があります。こうした分析の基本は研究者なら当たり前に使っていますが、民間企業のマーケター職以外では、あまり知られていないかもしれません。