「第3次世界大戦の入り口をくぐった」
――著書『ウクライナの現場から』で「世界史は変わった」と記している。その真意は?
佐藤和孝(以下、同) 第2次世界大戦以前、各国は武力で領土を拡大していった。
終戦後、物理的な力を使うのを回避して冷戦に突入。冷戦終結後もなんとか国際秩序を保っていた。それを破ったのはロシアだ。
完全に世界史が変わり、新しい段階に突入した。未来が見えなくなった。おそらく簡単には終わらないだろう。
今までの紛争や内戦とはまるで違い、世界を巻き込んでいる。第3次世界大戦の入り口をくぐったと考えたほうがいい。
――ウクライナ侵攻へ至る経緯をどう見る?
侵攻は9年前にすでに始まっていた。2014年2月に起こった「マイダン革命」が発端だ。ウクライナの首都キーウの独立広場マイダンで起こった、親ロシア派(親ロ派)政権への市民たちによる抗議デモである。
政府側は機動隊や警察を出して鎮圧をはかったが押さえ込めず、当時のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領はロシアに亡命した。
その後、親ロ派住民の多い東部のドンバス地方とクリミア半島をロシアが占拠してから、ずっと続いていると考えている。
私は、親ロ派側から2016年2月に取材したが、彼らには彼らなりの言い分があるようだった。当時58歳のある兵士は、「帝国主義の時代はよかった。あの頃を取り戻そうじゃないか」と話していた。
あの頃とは、ロシア帝国の時代。その復活を夢見ている人たちが、ドンバスやクリミアの戦争に参加していた。
膠着(こうちゃく)状態が約8年続いたが、多くのウクライナ国民は「領土を取り返したい」という今ほど強い気持ちは持っていなかったと思う。