「死亡時期」で被害認定をしていいのか?
在間 僕は、3・11からちょうど1年後の2012年3月に陸前高田市の法律事務所に赴任し、以来、仮設住宅に足を運んで法律相談を行いました。そのなかで夫を亡くした高齢女性と話しました。実は、一度、災害関連死ではないかと自治体に申請したのですが「関連性なし」と判断されていた。
ただ詳しい話を聞くと、災害と無関係とは思えなかった。彼女自身も災害がなければ、夫は亡くならなかったと考えていました。それで、再申請をお手伝いし、災害関連死と認められました。災害がなかったら、きっといまも元気に生きている。関連死の遺族は、みなそう考えているんです。
山川 そもそも関連死に認められるには、遺族が市町村に災害弔慰金を申請しなければなりません。災害弔慰金は自治体から災害遺族へのお見舞い金です。これは直接死にも、関連死にも支払われる。その後、自治体が開く審査会で、死と災害との関連性を判断される。
在間 僕も13年から3年間、岩手県山田町の審査委員を経験しました。審査委員は弁護士や医師、法学者、自治体の職員など4、5人です。山田町では個々のケースを丁寧に話し合っていきました。
山川 在間さんは、関連性の有る無しを判断する基準についてはどうお考えですか? たとえば、04年の新潟県中越地震では〝長岡基準〟が用いられ、52件の災害関連死が認められました。
長岡基準の特徴は時間で区切ること。災害後1カ月以内の死は〈震災関連死であると推定〉し、1カ月以上経過したケースは〈可能性が高い〉。半年以上過ぎれば〈震災関連死でないと推定〉とされた。3・11では、この長岡基準を参照した自治体が多かったために、被害実態とそぐわない判断がなされた。
福島にはいまだに帰還できない人も少なくないわけで、そんな状況下、時間で一律に区切っていくのはムリがあると思うのですが……。
在間 僕も画一的な基準をつくるのは不可能だと考えています。丁寧に話し合う、不明な点があれば独自に調査を行う……そうした審査の指針はあった方がいいとは思います。ですが、災害は、規模も違えば、被害実態も被災した人個々の状況も違う。画一的な支援制度では救えない被災者がいるように、すべての災害に用いられる認定基準をつくるのもムリがある。
山川 私が会った遺族も「死の意味を判断するのだから慎重に判断してほしい」と語る人が非常に多かったです。災害関連死がはじめて認められた阪神・淡路大震災から27年が経ちますが、いまだに災害関連死をめぐる問題はたくさんある。だからこそ、東日本大震災における3789件の災害関連死の実態をもう一度見直し、防災措置や支援政策、街づくりに活かしていく必要がありますね。
撮影/村上庄吾