好きな映画はパンフレットを2部購入

「悲しいほど企画が通らない時期がありました」映画『零落』で監督10作目となる竹中直人。「まだ生きていられるなら、ずっと映画の現場にいたい」_2

──007シリーズもお好きだと聞いておりますが。

洋画に関しては、映画雑誌ではないけど「ボーイズライフ」(小学館)という雑誌でよく007シリーズの特集をやってたんです! あと、好きな映画はパンフレットを2部買っていました!

007だと第2作の『007ロシアより愛を込めて』(1963)、初公開時は『007危機一発』という邦題だったんです。そのときのボンドガールだったダニエラ・ビアンキや、第4作『007サンダーボール作戦』(1965)のクロディーヌ・オージェが大好きで、当時は何度も見に行きました!

当時の映画館は入れ替え制じゃないから、映画を気に入ったら一日中見られましたものね!

映画館の人に直接お願いしてポスターをもらったりもしてましたね。当時はそういうことも普通にできていたんです。八王子の映画館まで行って森谷司郎監督の『赤頭巾ちゃん気をつけて』(1970)のポスターを譲ってもらったこともありました。

「悲しいほど企画が通らない時期がありました」映画『零落』で監督10作目となる竹中直人。「まだ生きていられるなら、ずっと映画の現場にいたい」_3
『エマニエル夫人』を特集した「ロードショー」1975年2月号。表紙は『エクソシスト』(1973)などで知られるリンダ・ブレアの振袖姿
©ロードショー1975年2月号/集英社
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──そういえば『零落』も『赤頭巾ちゃん気をつけて』も主人公の名前は薫(かおる)ですね。

あ、本当だ!! もしかすると潜在意識の中にあったのかな? もちろん偶然なんですが、『零落』では工と趣里が駅のホームで別れるとき、原作にはないのですが、趣里に「薫くん!」って、深澤を名前で呼んでもらったんです。呼び終わった後の趣里の顔を撮りたかった。

いやぁ、でも懐かしいな……。1970年代だと、僕がブルース・リーに出逢った年です! うお〜!! よく増刊号も買いましたが、あれは「ロードショー」?「スクリーン」?どっちだったかな……。

ブルース・リーと同じくらいにヒットしたのが『エマニエル夫人』(1974)で、今では信じられないけれど「ロードショー」も「スクリーン」も当時は大特集をやってましたよね。「スクリーン」は毎月、エッチな洋画の紹介もやってたし、「キネマ旬報」は日活ロマンポルノに力を入れてました。本当にすごい時代だった。

僕はブルース・リーといえば『燃えよドラゴン』(1973)の富山敬さんの吹き替え(1979年テレビ朝日放送版)が好きです! ほかにも中尾彬さんや柴俊夫さんや藤岡弘、さんなど、いろいろな方々がやられていて……。

しかし、ぼくは……(などなど、取材終了時間になっても話は尽きることなく、やはり竹中氏に映画の話をさせると収まりどころが全くなくなってしまうのであった!)

#1「原作者へのラブレター」と語る、映画『零落』にかけた思い

取材・文/増當竜也 撮影/nae. ヘア&メイク/和田しづか  スタイリスト/伊島れいか

『零落』(2023)上映時間:2時間8分

「悲しいほど企画が通らない時期がありました」映画『零落』で監督10作目となる竹中直人。「まだ生きていられるなら、ずっと映画の現場にいたい」_4


出演:斎藤工 趣里 MEGUMI 山下リオ
原作:浅野いにお
監督:竹中直人
脚本:倉持裕
音楽:志磨良平(ドレスコーズ)

漫画家の深澤薫(斎藤工)は、8年間の連載が終わり、予定していた新連載も延期となるなど、人気は下り坂。多忙な妻(MEGUMI)とはすれ違いの日々が続き、SNSには酷評がアップされる。さらに解雇したアシスタント(山下リオ)からはろくでなしの烙印を押され、どんどん鬱屈し自堕落になっていく。ある日、ふと“猫のような目”をした風俗嬢のちふゆ(趣里)と出会い、彼女との短い時間に安らぎを覚えるようになっていくのだが……。

3月17日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー
配給:日活/ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト:https://happinet-phantom.com/reiraku/#
©2023浅野いにお・小学館/「零落」製作委員会