“イロモノ”だった忍者学の風向きが変わった理由

そのため、改めて『どうする家康』での服部半蔵の描かれ方はありがたかったそうだ。

「だから今回の大河で新しい半蔵が描かれたことはとてもうれしい。『忍者ハットリくん』しかり、影の軍団のイメージしかり、これまで忍者といえば“刀を持った殺傷軍団”みたいなイメージで語られてきました。そこは僕としては、非常に心を痛めていた部分なんです。
僕ら一族は“諜報活動屋”なんです。戦国時代はともかく、江戸時代は戦のない太平の世ですから、いわゆる必殺仕事人みたいな人はいないわけですよ。
だから、卍字のマスクをして、カマを持って、パフォーマンスしてるという忍者の姿を僕は見ていられなかったし、その忍者像を“かっこいい”と思われるのも嫌でした。
大河の第6回『続・瀬名奪還作戦』の中で『忍者は金をもらえれば何でもやる』という言葉がありましたが、それが正しいんですよ。服部一族はとても貧乏な一族で、食べるに困っていたので」

“忍びじゃない”服部半蔵の登場は「うれしかった」……服部一族の末裔当主が語る『どうする家康』と己の出自を隠した幼少時代_5
「関の戸」各種
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今回、新たな「忍者像」が描かれた背景には近年の「忍者研究」の目覚しい発展があるという。歴史研究者の一人がこう話す。

「これまでは、忍者に関する文献がほとんど残されていないことから、その存在自体が疑わしいものだと思われていて、忍者の研究が“イロモノ”のように見られる風潮がありました。
しかし、近年、歴史研究の権威である、三重大学の藤田伸也教授、山田雄二教授らが同大学内に『国際忍者研究センター』を立ち上げ、忍者学を学問として研究した結果、戦国時代には大名の下で活躍していた忍びたちがいるという史料も発見された。
また、まきびし(忍者が逃げる途中にばら撒くことで、追手に怪我を負わせる道具)のようなものも見つかっており、その実情が解明されつつあります」

そんなリアルな「忍者像」が解明されていく一方で、ドラマでは松本まりか(38)演じる女忍者“女大鼠”の活躍も注目を集める。変装の名人である彼女は父・大鼠の死後、いささか頼りない半蔵の右腕となって、時には遊女、またあるときには村娘となり、服部党を引っ張っていく。

そこで気になるのは、女大鼠のような「術」を使う忍びは実際に存在したのか、ということだ。そもそも、忍者といえば、真っ先に思い浮かぶのが「忍法帳」や「秘伝の書」の存在ではないだろうか。服部家に代々伝わる「秘伝の書」はあるのだろうか。

中編では現代に伝わる忍術にスポットを当てる。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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