2023年度アカデミー賞最多ノミネート!  A24史上NO.1ヒット記録中!   フツーのおばさんの、フツーじゃないマルチバースカンフーアクション映画、『エブエブ』!_3

俳優ミシェル・ヨーの人生のように

コインランドリーを営む中国系アメリカ人一家。家族を仕切っているエヴリン(ミシェル・ヨー)は、日々の暮らしにうんざりしていた。税金問題や父親の介護、レズビアンの娘は反抗的で、夫のウェイモンド(キー・ホイ・クァン)はてんで頼りにならない。

そんなとき、国税庁から税金の申告問題で呼び出しが掛かる。

国税庁のかなりクセ強めの監察官(ジェイミー・リー・カーティス)に問い詰められていたそのとき、エヴリンの意識の中に別の宇宙から来たという夫に「来るべき全宇宙の危機をもたらす悪に立ち向かえるのは、君だけだ」と告げられて、訳のわからぬままに、エヴリンのマルチバースを駆け巡る闘いが勃発する。

ついさっきまで、とげぬき地蔵商店街で売ってるような服を着て(これがまたコワイほど馴染んでいるミシェル・ヨー様)、日常にイラついていたフツーのおばさんのエヴリンが、突然現実とは違う宇宙を次々と移動して、変幻自在なエヴリンが現れるのだから、これはもう目が離せない。

京劇スター、カンフーマスター、ゴージャスなドレス姿のセレブ、手が巨大なソーセージのおかっぱおばさん、赤ん坊のエヴリンから、彼女が夫と出会って娘を授かった頃の幸せなエヴリンまで、まるで俳優ミシェル・ヨーの人生そのもののように、コミカルに描かれる。

だが、笑わせるだけじゃないのがダニエルズ監督。過去のエヴリンの姿に家族の絆を見せたかと思うと、アクションシーンではキレッキレのカンフーファイトで楽しませるのだ。

ミシェル・ヨーの強さだけでなく、指先までも美しいカンフーアクションを観るにつけ、彼女の40年にわたる様々なキャリアの素晴らしさを感じずにはいられない。

2023年度アカデミー賞最多ノミネート!  A24史上NO.1ヒット記録中!   フツーのおばさんの、フツーじゃないマルチバースカンフーアクション映画、『エブエブ』!_4
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本作で数々の賞レースの助演賞を獲得しているエブリンの夫役のキー・ホイ・クァンのウェストポーチを使ったカンフーアクションと、国税庁の監察官に扮したジェイミー・リー・カーティスの怪演も見どころ。

『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』や『グーニーズ』で子役出演したキー・ホイ・クァンは、本作で見事にカムバック。ミシェル・ヨーと共にアジア勢の感動的な受賞スピーチも話題だ。

『エブエブ』の勢いは止まらない。



イラスト・文/石川三千花 

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 (2022)
原題:Everything Everywhere All at Once
 2時間19分 アメリカ
配給:ギャガ
監督/ダニエルズ(ダニエル・クワン ダニエル・シャイナート)
出演/ミシェル・ヨー ステファニー・スー キー・ホイ・クァン ジェイミー・リー・カーティス 他
https://gaga.ne.jp/eeaao/

カンフーとマルチバース(並行宇宙)の要素を掛け合わせ、生活に追われるごく普通の中年女性が、マルチバースを行き来し、カンフーマスターとなって世界を救うことになる姿を描いた異色のアクションアドベンチャー。奇想天外な設定で話題を呼んだ『スイス・アーミー・マン』の監督コンビのダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)が手がけた。