今、我々に必要な笑い!
伊坂幸太郎の小説「マリアビートル」を映画化した本作の脚本を最初に読んだときに、ブラピは大笑いして、パンデミックな世の中で必要なのはこういう笑いだ、と確信。
以前はブラピのスタントマンでもあった旧知のデヴィッド・リーチ監督(『デッドプール2』)のオファーを快諾したのだという。時速350キロの超高速列車内で、矢継ぎ早に繰り広げられる壮絶なバトルアクション。
この異常なシチュエーションに戸惑いながら、飄々とジョークを飛ばし、いずれもクセの強い殺し屋を相手に闘うレディバグがブラピの役どころだ。
気軽にふらりと外国からやってきた風貌のレディバグは、黒ぶちのメガネとダサいバケットハットを被った殺し屋だ。まるでピカピカのスターのオーラを消すかのように被ったそのバケットハットは、ブラピ自身のアイデアなのだそう。
歳を重ねて、いい具合に渋味を出しながらも、未だに肉体的な若さを保ち、なおかつ彼独特の茶目っ気を発揮するような本作の役柄が、ブラピにフィットしていると思った。
全てが完璧なヒーローではなくて、どこか抜け感があるところがブラピらしい。
銃を持つのが嫌いで、「怒りは理解力を下げるよ」と向かってくる殺し屋に諭し、女子高生のかっこうをした邪悪なプリンス(ジョーイ・キング)をコロッと信じ込む人の好い殺し屋のレディバグ。身に覚えがないのに命を狙われ、成り行き上闘っては、危機一髪で相手を倒してしまう。
対戦する10人の殺し屋のキャラが強烈なのに、主人公が軽いノリで、はちゃめちゃに闘いのコマを進めるのだから、もう笑うしかないのだ。