いじめは陰湿なものから暴力までさまざま
暴力団幹部は「黒幕にマニラ在住の日本人の名が挙がっている」と言うが、たとえ黒幕がいたとしても、渡邉疑者も今村容疑者も重い量刑となることは免れないだろう。
「詐欺だけでもすごい件数だが、強盗だけでも何十件という数だから有期刑なら刑期の最長は懲役30年。それに人殺しが加われば求刑は無期懲役だろう。もしそいつが指示役なら死刑が求刑される可能性もある」(暴力団幹部)
懲役刑ですんだとしても、自由を金で買えて、やりたい放題だったビクタン収容所での暮らしとは雲泥の差となる。
「ビクタン収容所はあんな汚い所だが、清潔な日本の留置所よりはるかに自由がある。
一方、日本の刑務所暮らしは単調な日々。他の囚人らと関わらなければならないし、出役(しゅつえき=工場での刑務作業を指すムショ用語)しなければならない。
食事でそばが出たとしてもすする音さえしない、食器同士がぶつかって音がしたら全員がそっちを振り向くほどの静けさだ。鼻をすすれば『失礼しました』、工場の清掃では動くたびに『前を失礼します』などと先輩囚人に言わなければならない。1人でも飛ばしたら、最初からやり直しだ」(暴力団幹部)
刑務所内では犯した罪によってヒエラルキーがあり、上から殺人、強盗、放火などとランク付けされる。性犯罪や詐欺はランクが低くて他の囚人からいじめられやすいと聞くが、暴力団幹部いわく、
「罪状に関係なく、ヤツらが堂々と自分が今回の連続強盗事件の指示役だと言ってムショに入ったなら、周りは誰も何も言わない。
だが、罪をなすりつけあっている様子がテレビに流れれば、見下げ果てたヤツと認識され、いじめの対象になりやすい。特に組織や仲間をうたわない(売らない)という鉄則がある暴力団組員の囚人からの目は厳しくなる」
いじめは陰湿なものから、暴力的なものまで多種多様だそうだ。
「刑務所では毎月、預けてある留置金で日用品や書籍を自費で購入できるが、他の囚人たちから日用品や本をたかられるし、取り上げられることもある。
暴力的ないじめになると、みんなで耳を引っ張るなどはかわいいもので、殴られることも少なくない。殴られるのはアザが残らない腹だし、刑務官も長くいる囚人をひいきにするから、多少のことには目をつぶる。
出役した工場が溶接工場であれば、服で隠れる箇所に真っ赤に熱した溶接棒を押しつけられることもある。やる方も懲罰覚悟だが、生意気なヤツは運動、出役などで廊下に整列した途端に襲いかかられることもある」(暴力団幹部)