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※マンガ原作を未読で、アニメ版のみ視聴している方には、キャラクターやストーリー上のネタバレを含みますので、ご注意ください。

売れる、売れないはわからない(林)

佐久間 マンガって、一話一話の面白さもありながら、数年かけてたどり着きたい場所みたいなのもありますよね?

 ありますね。

佐久間 作家さんによって全然違うと思うんですけど、一緒に組み立てるのか、それとも作家さんがたどり着きたい場所までサポートしていくというイメージなんですか?

 作品によりますね。遠くのゴールは決まっているけど、その途中のマイルストーンが何も決まってないことが多いので、そういう場合は「どうやってたどり着きます?」というのを定期的に議論して…という感じです。できる限り面白いルートをたどりたいので、定期的に長期の目線での話をするんですけど、長期の目標を決めたくないというか、言いたくないという人もいるんですよね。

佐久間 ちゃんと心の中では決まっていると。

 そうです。ちゃんと純粋に読んでほしいからという人がいるので。そういうときはあえて聞かずに、目の前の一話に集中して打ち合わせをするということもありますし、本当にバラバラですね。

佐久間宣行(テレビプロデューサー)×林士平(『少年ジャンプ+』編集者) 【仕事術からエンタメの未来まで】炎の20,000字対談! 2_1
(左)佐久間宣行(テレビプロデューサー)×(右)林士平(『少年ジャンプ+』編集者)
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佐久間 マンガ編集の場合、作家さんと向き合って一話一話の面白さをつくっていくのと同時に、そのマンガを話題にしていく宣伝プロデューサーの側面もありますよね。

 はい。僕としては両方ずっとやっている感じです。作家さんは逆に宣伝のことを考える余裕はまるでないんですよ。こちらから都度「こういうことをやりたいのでやりますよ」というのを提示します。作家さんの協力が必要な場合は「すみませんがちょっと一日いただきます」とお願いしますが、それ以外はだいたいこっちがプランを用意して、「ここまでやっていいですよね?」というのを確認して進める感じです。

佐久間 一緒に仕事する作家さんで、「この部分をもっている人とは何か一緒にでかいものをつくれるな」という共通したものっていうのはあるんですか?

 それがないんですよね。ヒット作家で共通点とか、ヒットする作品の共通点とかよく聞かれるからちょいちょい考えるんですけど、ないんです。愚直にマジメに、ということですね。マンガの仕事がそもそもそういう構造になっているので、机に向かい続けている人しか生き残らない。描くのがしんどいという人はなかなか難しい。でも、そういう人でも売れている人がいるんですよね。こればっかりは本当にわからないです。

佐久間 売れる、売れないはわからないですよね。だから、僕は芸人のネタには口を出さないようにしているんですよ。責任を取れないから。芸人から「ここの部分どうですか?」と言われたときには正直に意見を言うし、自分の才能といわゆる現行バラエティの折り合いが付かない人にアドバイスみたいなことはするけど、ネタはその人本人の宝物だから口は出さないようにしている。それもあって、審査員の仕事は極力やらないようにしています。

 そうなんですね。