あえてマイノリティな意見を拾うワケ
――ミナミ夫婦は、話し会うことで離婚を回避することができました。
ハッピーエンドになったことについて「ミナミへのバッシングがあったから、こういう結末にしたのでは?」という声があったんですけど、当サイトでは全エピソードが揃ってから配信しているので、そういうことはないです。
私は、夫婦間の悩みやトラブルの大半は、話し会うことで解決できると思っています。ですから、ミナミ家の物語を読んで、そこを感じ取っていただけたら嬉しいですね。
――この作品は食事がテーマですが、家庭の数だけ悩みがあると思います。ママスタにはどんなテーマが多く寄せられますか?
私がサイトに関わって7年ほどですが、コロナ禍で悩みの種類が変わって来たように思います。コロナ禍前は多かったママ友関係のトラブルが激減しましたね。
子どもの送り迎えでのおしゃべりや、家を行き来することがなくなり、友だちとの関係にあまり興味がなくなったのではないでしょうか。
――逆に増えたのは?
ドメスティックな悩みです。夫がリモートワークになってずっと家にいるのがつらい、義母との関係がこじれている、など家の中のことが増えました。
マンガにするのは、どちらかというとマイノリティなご意見や、普段は外に出てこないネガティブな感情にフォーカスすることが多いんです。日常の中ではフタをされてしまうような問題を、あえてピックアップするというかたちです。
――そういったテーマがサイトに載ることで、同じような悩みを持つ方が「自分だけじゃないんだ」と楽になれることもある?
たまに、編集部で「このテーマは共感は得られないかも」と思いながら公開する作品もあるんです。非常にレアケースなんじゃないかと。
ところが「私もこのことで悩んでいました」という声が必ずある。ですから、見過ごされがちな感情の救済という意味でも、小さな声に耳を傾けていきたいと思っています。
――読者からの声があって、それがマンガという形になり、また読者からの声が上がるというのが、ママスタの魅力ですね。
ひとりのママのエピソードに対して、議論が発生するというところが、まず重要だと考えています。当事者以外にもそのママのことを知ってもらい、考えてもらうことに繋げられたら、と。
そして当事者のママにも、自分以外のママの悩みを知って考えて欲しい。そうすることで、ママたちは前に進むことができると思うから。
――サイトを運営する中で、家庭とはどういったものだと感じますか?
コミュニティで発言してくれる人たちも、編集部で働いているスタッフ、それぞれに悩みがあり問題を抱えています。答えはひとりひとり違うし、テンプレートがあるわけじゃない。
家庭には、正しいや間違ってる、古いとか新しいとかはなくて、最近流行りの〝多様性〟という便利な言葉を最大限に都合良く解釈して、みんなゆったり、マイペースにやっていけたらそれが一番だと思います。
――これから、ママスタセレクトではどういったことを発信していきたいですか?
とにかく、リアルな声をていねいに拾っていきたいです。『妻の飯がマズくて離婚したい』が話題になって、ママ以外、夫やママの親世代の読者が増えたこともあり、介護や相続、その先の問題などにも、もっと力を入れて、ママはもちろん、すべての人が笑顔で、生き生きと生活するお手伝いができたらと思っています。
一番反響の大きかったミナミさんのエピソードはこちらから(第一話を読むをクリック)
取材・文/工藤菊香