契機は勝みなみの勝利
そもそも「黄金世代」とは何なのか。冒頭に記したとおり「1998年度生まれの女子プロゴルファー」である。ではその歴史はどこからスタートしたのか。それは2014年、高校1年のアマチュアだった勝みなみが「バンテリンレディスオープン」で史上最年少優勝をしたのが契機となった。
勝は翌2015年の日本女子アマ選手権のタイトルを獲得しているが、切磋琢磨した同世代の選手たちは「勝みなみさんができるなら私も……」と考えたことは想像に難くない。当然、そのモチベーションアップは、同世代ゴルファーのレベルもアップさせる。
そうした中、2016年に畑岡奈紗が17歳で「日本女子オープン」にアマチュア優勝してプロ転向。さらに翌2017年には黄金世代たちが高校を卒業して、プロテストに挑み始め、続々とプロデビューを果たす。
黄金世代の中で、プロとして最初にツアー優勝したのは畑岡で、2017年9月に「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」を制した。翌18年には、4月に新垣比菜が「サイバーエージェントレディース」で、8月には、大里桃子が2回目のプロテスト合格後、最初のツアー競技「CATレディス」に優勝した。
そして始まるシブ子のストーリー
2019年になると、いよいよ渋野日向子のシンデレラストーリーが始まる。2018年、2度目のプロテストで合格した渋野は2019年ツアー前半戦の出場権を得た。期限の限られた権利だったが、5月に公式戦「ワールドレディスサロンパス杯」で初優勝。6月時点で女子ツアー賞金ランキング3位となり、8月のアメリカ女子ツアーのメジャー大会「AIG全英女子オープン」の出場権を獲得した。
ここまででも相当なシンデレラストーリーだが、初の海外遠征直前の7月、新設された大会「資生堂女子オープン」にもプレーオフの末に勝つ。そして仕上げというのか、ダメ押しというのか、本番というのか、「AIG全英女子オープン」にも優勝してしまうのだ。初めて出場した海外ツアー、しかもメジャー大会のチャンピオンである。にこやかに戦い、そして勝つ渋野はスマイルシンデレラと呼ばれ、その人気は日本のみならず、世界のゴルフファンに波及していった。
2019年、黄金世代はいよいよ勢いを増していく。渋野のブレイク直前の3月、河本結が「アクサレディス」で初優勝。その後、原英莉花は「リゾートトラストレディス」、小祝さくらは「サマンサタバサレディス」、淺井咲希が「CATレディス」と9人の黄金世代がツアー優勝を果たした。
2020年以降も黄金世代の活躍は続き、彼女たちの優勝回数はなんと、41!(アマチュア時代、海外・国内すべて合算。2022年4月25日現在)
そして、すでに優勝経験のある11人以外にも、初優勝が期待されている黄金世代は、6月の「全米女子オープン」日本予選を突破した高木優奈やシード選手の臼井麗香、山路晶などまだまだいる。今年は女子ツアーから目が離せない。