「死ぬけ、食べさせんでいい」

この証言からわかる通り、当時の緒方には、10歳の少女への虐待という、異常事態についての抵抗感が欠落している。その場にいた唯一の大人がこうした状態のなか、花奈ちゃんは松永に追い詰められていった。

〈松永は、そのころから、洗面所で、花奈と2人で、毎日、一日1回から3回くらい、一回当たり30分から時には1時間以上も話をした。松永は洗面所のドアを閉めて花奈と2人だけで話しており、緒方は後で松永から花奈との会話の内容を聞くこともなかったので、松永と花奈がどのような会話をしていたのかは分らない。

緒方は、当時は、松永が花奈を西浦家に帰すため、あるいは、被告人両名との同居生活を続けさせるため、被告人両名が犯した犯罪を他言しないように言い含めているのではないかと思っていた〉

後に緒方は〈花奈に死を受け入れさせようとしていたのではないかと思う〉と考えを改めたことを明かしている。とはいえ、その場でなにか具体的な行動に出るということはなかった。

〈緒方は、そのころ、松永に対し、花奈に食べさせる食パンの枚数を尋ねたとき、松永は、食パンの枚数を4枚から1、2枚に減らすように指示して、「もうあんまり食べさせなくていい。太っていたら大変だろう。」と言った。

緒方は、松永が花奈の食事を極端に減らしたこと、和美〔花奈ちゃんの祖母〕の死体解体作業の際、脂肪が多く解体作業に苦労した経験があったので、松永の言葉が、「花奈が太っていたら死体の解体作業が大変だ。」という意味に理解されたことから、松永が花奈の殺害を考えているのではないかと思った。

甲女〔監禁致傷の被害者である少女・広田清美さん。父を目の前で殺された上、7年間監禁され続けていた被害者。彼女の逃亡をきっかけに、松永と緒方は逮捕される〕もその場に居り、松永の発言からそのことを察した様子であり、緒方と顔を見合わせた〉

同時期の状況について、松永や緒方と一緒にいた清美さんは次のように供述している。

〈花奈は死亡直前ころになると、顔や身体が痩せていた。花奈は一日1回食パンだけを与えられた(枚数は覚えていない。)。花奈はおむつを使用させられた。花奈はたびたび通電された。
松永は、全裸の花奈の手足をすのこに縛り付け、手足、顔面、陰部等にひどい通電をした。花奈は、通電を受けたとき、「ヒックヒック」としゃっくりのような声を上げた。花奈は、寝るときは、おむつかパンツだけを身に着け、両手を合掌させて手首を縛られ、首と手首を一緒に縛られ。両足首も縛られた。
松永は、佑介事件後、何回か、花奈と二人だけで話をした。松永は、佑介事件後、花奈を殺害する何日か前、片野マンションの和室で、緒方に対し、「あいつは口を割りそうやけ、処分せないけん。」と言った。そのとき、甲女も和室に居た。
松永は、そのころ、緒方に対し、「死ぬけ、食べさせんでいい。」と言った〉