作品の“オチ”だけは先に決めていた
――此元さんはアニメであるかどうかを考えながら執筆されたのでしょうか?
此元 キャラクターが動物であるとか、仕掛け自体はアニメにしかできないものだと思いましたけど、脚本の段階で意識することはなかったです。ただ、自分で漫画を描くわけではないので舞台の幅が広がったというか。例えばハロウィンのシーンとかは、漫画だったら大変なので描かないですね。
平賀 あのシーンは木下監督が頭を抱えていました。ハロウィンの渋谷の人混み!? となって(笑)。
――漫画であれば内容をある程度ハンドリングできると思いますが、アニメチームに委ねることへの不安はなかったのでしょうか?
此元 漫画でも自分でプロットも描くんですけど、漫画では大コマで表現するシーンを、脚本上でどう表現していいのかわからなくて。最初は「(強調)みたいなことを書くわけにもいかないだろうし」と思っていたのですが、そこは木下監督を信頼してやっていたので大丈夫でした。
吉田 木下監督とならいける、と思った瞬間はどこだったんですか?
此元 ちょうど1話を書いたあと、木下さんが作ったラフの映像に、仮の声優さんが声を当てるテスト現場に呼んでもらったんです。そのときのディレクションが、僕の思い描いていたセリフの演出とズレがなくて、大丈夫だなと思いました。
吉田 そのときは1話のシナリオだけできていたんですか? 作品全体から考えると、「小戸川だけが動物に見えていた」というオチができていないと難しい作品だと思うのですが。
此元 そうですね。先にその設定だけは決めていました。作中でどう見せるかは別としても、一応この体(てい)で進めていきますと。そういう設定じゃないと、動物たちがこういうドラマになるのが理解できなかったので。
平賀 此元さんに「東京のリアルな日常をやりたいんです」と話したとき、「だとしたら動物の姿に違和感がある」という、言われてみればそうだよな……という感想をもらって(笑)。そのとき、「例えば主人公のトラウマでそう見えている、みたいなシリアスなオチでも良いですか?」という話もいただいたんです。
此元 僕が考えるなら、それしかなかったという話ですね。
犯人はギリギリになるまで決めていなかった
吉田 オチが浮かんだ段階で、事件のあらましはできていたのですか?
此元 いや、それは書きながらですね。
吉田 犯人すらも決まっていないとか……?
此元 そうです。
吉田 (脚本家自身も)犯人がわからないままではじまっている!?
此元 最終的に、ギリギリ納得できるところで意外な人を犯人にしようとしていましたね。
吉田 彼女(和田垣さくら)を犯人にしようと決めたのはどのあたりですか?
此元 11話ですかね。二階堂の回想シーンだったと思います。最悪、脚本の段階なのであとで戻って修正できるので。
吉田 その頃はシナリオだけ動いている状態なんですよね?
平賀 いや、もう監督は1話とかの絵コンテも平行して進めていたと思いますね。
吉田 めちゃくちゃ異例の作り方じゃないですか?
此元 そうなんですかね?
平賀 異例ということに誰も気づいていないまま進めていましたね……(苦笑)。
後編に続く
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