今も忘れない創業社長の考え「店は出すけど、商品は出さない」

コロナ禍で年間35億円の売上減を乗り越えて…ルノアール一筋50年のベテラン社長が今も忘れない創業者の衝撃的な教え「店は出すけど、商品は出さない」とは_5
バブル期には店内の噴水で鯉が泳いでいた

日本の高度成長とともに、ルノアールはビジネスマンの溜まり場として栄華を極めていった。

ゆったりと落ち着く空間で長居し、タバコを嗜みながら至福の時間を過ごす。ときには営業の合間にくつろいだりと、都会の喧騒から離れたオアシスとして認知され、足繁く通うサラリーマンで繁盛するようになったのだ。

その一方、コーヒー1杯のみの注文で客に長居されてしまえば、回転率が悪くなり、利益を出しづらくなる。「原価率をいかに抑えるかにこだわっていた」と猪狩氏は話す。

「つい最近まで、食事のメニューも最低限のサンドイッチやトーストのみに絞り、原価率は1桁台を維持していました。私が影響を受けたのは創業者(小宮山 正九郎氏)の商売に対する向き合い方でした。
なかでも『店は出すけど、商品は出さない』という考えは衝撃的で、ルノアールという快適な空間をサービスとして提供し、いわばテーブルチャージとしてお金をいただくものだと。

コロナ禍で年間35億円の売上減を乗り越えて…ルノアール一筋50年のベテラン社長が今も忘れない創業者の衝撃的な教え「店は出すけど、商品は出さない」とは_6
創業者で初代社長の小宮山 正九郎氏

つまり原価0円というわけですね。そうは言っても、さすがに最低限の商品は提供しないといけない(笑)。でも、創業者の思いに今のルノアールの全てが集約されていると思うんですよ。おしぼりや温かいお茶の提供の根底には、ルノアールという空間で快適に過ごしてほしいという思いがあるんです」