寒さや強度の変化もリスク要因か
ACLのケガのリスクを左右する要因としては、芝の種類や使用するスパイクなども挙げられる。天然芝に比べて人工芝は一般的にグリップ力や摩擦力が高くて硬く、膝への負担が高まる(ケガの発生率に大きな差はないというデータもある)。特に若い選手においては、グリップ力が強いシューズに見合った体ができていない場合や、フィールドと合っていない場合などに靭帯を切ってしまうことがあるという医師の報告もある。
WEリーグにおけるクラブ別のACLのケガ人数と、負傷時期(4月〜9月よりも10月〜3月に多い)に目を向けると、寒さやプレー強度との関係も無視できない。
WEリーグは欧州リーグに足並みを揃える形で秋春制を採用しており、寒冷期の試合が増えた。寒い時期は筋肉や関節の柔軟性が低下し、ケガのリスクが高まる。1月の皇后杯など、氷点下の中で行われた試合もある。
WEリーグは、スポーツパフォーマンス分析会社「InStat」の調査に基づき、「リーグ初年度は、1試合あたりのプレッシング回数が海外リーグに比べて多かった」というデータを公開した。
インテンシティ向上の背景には、プロ化によって自主トレーニングの時間が増えたこと、戦術の落とし込みが進んでいることなどが挙げられる。その変化に対応できる体づくりも必要になるが、初年度は「自主練を急激に増やしたことで、負荷が強すぎて体がついていかなかった」と話す選手もいた。
そうしたプロ化による環境の変化との因果関係について、リーグは実態の把握を進めているようだが、まだ切迫感は乏しいように感じる。