平成から令和へ。
不倫はスーパーにも落ちているライトなお遊びに

不倫ドラマに革命をもたらした作品といえば、『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系列・2014年)だ。主演女優が上戸彩という時点で「清純イメージ刷新だろうか」と驚いたけれど、本編は斬新だった。
「不倫は近所のスーパーにも落ちているかもしれない」という幻想を見せてくれたのだ。

笹本紗和(上戸)はキャリアウーマンでもセレブ妻でもない、スーパーのパート店員。優しいけれど煮えきれない夫に不満を抱えながら、普通の生活をやり過ごす。そんな平凡な主婦だったのに、ある日落ちてしまった恋に生活もすべて捧げて、ついにはともに逃げようとする。
このくだりはかつての不倫ドラマを彷彿させるけれど、視聴者の心をブスブスと刺したのはヒロインがスーパーのパートタイマーだったという親近感であり、共感だった。このドラマの放送以降から私の周囲でも不倫をする人間が急増した。

最終的にドラマのようにドラマティック且つ、ハッピーエンドで終わるかといえば、彼女たちの様子を見ているとそうでもない。浮気が夫に見つかると事態修復には時間もかかっているし、そのまま離婚していく夫婦も何組も見送った。

ここはやはり、現実の不倫には踏み切らず、放送本数こそ少なくなっているけれど、ドラマを見て完結してみるのが得策ではなかろうか。

文/小林久乃

#1「平成初期は「男性が優位にたつ不倫愛」が多かった!」はこちら

『ベスト・オブ・平成ドラマ!』
小林久乃
平成後期の不倫ドラマのキーワードは「男性の軟弱化」と「近所のスーパーにも落ちているくらい身近な恋」だった_1
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1650円
240ページ
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