『スター・ウォーズ』新3部作が切り拓いた新たな地平
配給収入ランキング2位は、『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』(1999)だ。『ジェダイの帰還』(1983 ※公開時の邦題は『ジェダイの復讐』)から16年ぶりに『スター・ウォーズ』の新作が3部作として公開されるとあって、当時は大きな話題を集めた。「ロードショー」も8~10月号の表紙にし、各号で公開日のLA現地取材などの特集に数十ページを割いている。
本作の評価に関してはすでに語り尽くされているので割愛するとして、ここではジョージ・ルーカスの功績を挙げたい。
まずは、キャスティングだ。オビ=ワン・ケノービ役のユアン・マクレガーとパドメ・アミダラ役のナタリー・ポートマンは、いずれもインディペンデント寄りの作家性の高い映画で活躍する若手俳優だった。また、オビ=ワンの師クワイ=ガン・ジン役のリーアム・ニーソンにしても、『シンドラーのリスト』(1993)や『マイケル・コリンズ』(1996)で知られる演技派俳優だ。彼らを起用したのは見事な鑑識眼であり、俳優の側も『スター・ウォーズ』を経て役者として活躍の幅を広げた。その後、スーパーヒーロー映画に演技派たちが出演するのが当然となってのはご存じのとおりだ。
もうひとつは、「前日譚(プリクエル)」というコンセプトを普及させたことだ。それまで人気シリーズの新作といえば、続編と決まっていた。前作で紹介した登場人物のその後を描いていく。だが、『ファントム・メナス』から『シスの復讐』(2005)まで続く新3部作の舞台は、『スター・ウォーズ(新たな希望)』(1977 ※第1作だがエピソード4として製作された)の前の話であり、オリジナル3部作の主人公だったルークやレイア、ハン・ソロは(ほとんど)登場しない。
いまや映画やテレビドラマは前日譚やスピンオフで溢れているので、若い人には想像しづらいかもしれないが、当時の一般観客にとってこれは斬新な概念だった。それ以前も、『ゴッドファーザー PARTII』(1974)や『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』(1992)といった、過去を描く作品は存在していたものの、ジョージ・ルーカスは『スター・ウォーズ』新3部作で前日譚の楽しみ方を世に知らしめた。その結果、『007』や『エイリアン』『猿の惑星』『ハリー・ポッター』『ロード・オブ・ザ・リング』『X-MEN』といった人気シリーズも追従することになったのだ。
文/小西未来
◆表紙リスト◆
1月号/リヴ・タイラー※初登場 2月号/ブラッド・ピット 3月号/レオナルド・ディカプリオ 4月号/キャメロン・ディアス 5月号/クレア・デインズ 6月号/シャーリズ・セロン 7月号/ブラッド・ピット 8月号/ユアン・マクレガー※初登場 9月号/ナタリー・ポートマン 10月号/ユアン・マクレガー 11月号/キアヌ・リーヴス 12月号/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ※初登場
表紙クレジット ©ロードショー1999年/集英社