あやふやな「余震」の定義

ここまでは良い話をしてきましたが、問題がなかったわけではありません。私が気づいた課題を3つ挙げます。

1つ目は新幹線です。乗客の命を守ったのは評価できますが、東北新幹線の全線運転再開まで約一カ月もかかった点には課題が残りました。宮城県白石市の高架橋梁はひどく亀裂が入りましたが、こうならないよう安全な設計が望まれます。

また、安全性を高めるには、脱線を防ぐことも必要でしょう。新幹線はお互い乗り入れているのに脱線防止の仕組みはJR各社で統一されていません。これで大丈夫なのでしょうか。

2つ目は電力です。ブラックアウトを防ぐためとはいえ、約210万戸が地震と同時に停電するのは、単に不便なだけでなく、地震の被害を拡大させる要因にもなりかねません。

東日本大震災では、首都圏に電力を供給する発電所が福島県に集中していたために供給力が大幅に下がり、それが計画停電につながりました。発電所の大型化や集中立地が大規模災害に弱いことが教訓として活かされていなかったのです。

今回も、基本的には福島県内の火力発電所の被害が原因でした。中には、1基で100万キロワットの石炭火力発電所もありました。皮肉なことに、これは今回、東京電力が他社から供給してもらった電力の総量とほぼ同じです。大型化はコストを下げる一方で、リスクを高めるのです。

3つ目は「余震」についての科学的な議論がないことです。3月の福島県沖地震はM7.4で、これがもし、11年前の東日本大震災の余震だとすると、一連の中で最大級のものでした。しかし、気象庁は余震とはしていません。

東京新聞(2022年3月17日)によると、気象庁は「大震災から10年が過ぎ『個々の地震が余震かどうかの判断が難しくなった』『余震かどうかに関係なく、大地震や津波に備えてほしい』などの理由」から「『余震と考えられる』との表記をやめた」というのです。

3月の地震は昨年2月13日に起きた福島県沖地震(M7.3)とほぼ同じ場所が震源でしたが、昨年は「余震と考えられる」と発表していました。

また、NHK(2022年3月17日)は、東北大学災害科学国際研究所の先生が「今回の地震は昨年の地震の余震活動だと分析した」と報道しました。ただ、昨年よりも今年の地震の方がマグニチュードが大きいので、余震というのは不自然な説明です。ちなみに同研究所は、昨年の福島県沖地震は東日本大震災の余震と発表しています。

昨年の地震の後には「余震は100年続く」と言う専門家もいました。それからわずか1年で各専門家の見解、発表が様変わりしています。皮肉な見方をすれば、昨年3月、政府が「最後の追悼式典」を開いたので、余震も10年一区切りと、専門家が判断したのでしょうか。

一方、政府の地震調査研究推進本部は4月11日、3月の地震について「東日本大震災の余震域で起きた地震で、今後も大きな地震に注意が必要」と発表しました。筋の通った説明ですが、これは、気象庁の考え方に異議を唱えているのでしょうか。

ぜひ、専門家の間で「今回の地震は余震なのか」「余震活動は昨年で終わったのか」を議論して、国民が納得する説明をしていただきたいものです。

写真/共同通信社