作家デビューした今、これから書きたいもの
――デビューの実感が湧いたのはどんな時ですか?
ゲラ(校正紙)をいただいた時です! ゲラという単語を聞いたことはあったんですが、これまでは電子のお仕事だったせいか、ゲラをチェックする経験がなくて。他の作家さんが「ゲラをもらった」というのを聞いていいなぁと憧れていたので、今回文庫化の作業でゲラをいただいた時は「これがあの、憧れの!」と、すごく感慨深かったです。
それから、カバーイラストのラフをもらって、イラストが完成して、書影デザインができあがって、オレンジ文庫の公式サイトに書影が公開されて……と進むにつれて徐々に実感が深まりました。今は刊行が本当に楽しみですが、やっぱり緊張しますね。
――自分の投稿生活を振り返って、今年のノベル大賞を目指す投稿者のみなさんに伝えたいことはありますか?
今年のノベル大賞を目指している皆さんには、「他人と自分を比べないで」とお伝えしたいです。いくら人と比べても、結局自分の書きたい物語には自分にしか書けません。自分自身、メンタルがマイナスに傾いた時は、SNSと距離を置いて公募関係の情報をシャットアウトしたり、物理的に「他人と比べる環境」から距離を置いたりしてきました。
気になっても、エゴサはしないし、気持ちが落ち込みがちな時は、自分が目指している公募賞の過去の受賞作を読むのも控える……。執筆に集中するためにはメンタルの自己管理がすごく大事だと痛感しました。もしかすると、それは現代の創作する人すべてに通じるかもしれません。
――森ノさんご自身の、今後の抱負を教えてください。
私には今、書きたいものがたくさんあります。子供が主人公の児童文学的なもの、お仕事小説、本格ミステリー、そしてBLも諦めたくない。何年も頭の中で飼っているキャラもいますし、ジャンルを問わず、それら全てを書いてみたいです。集英社オレンジ文庫では、昨年ノベル大賞で大賞を受賞された泉サリさんの『みるならなるみ/シラナイカナコ』の疾走感が大好きです! 佳作を受賞された柳井はづきさんの『花は愛しき死者たちのために』も、1ページ目から引き込まれる世界観が本当に好き。これからは、自分もそういう作品を書いていきたいなと思っています。
取材・文/増田恵子