作家デビューした今、これから書きたいもの

――デビューの実感が湧いたのはどんな時ですか?

ゲラ(校正紙)をいただいた時です! ゲラという単語を聞いたことはあったんですが、これまでは電子のお仕事だったせいか、ゲラをチェックする経験がなくて。他の作家さんが「ゲラをもらった」というのを聞いていいなぁと憧れていたので、今回文庫化の作業でゲラをいただいた時は「これがあの、憧れの!」と、すごく感慨深かったです。

それから、カバーイラストのラフをもらって、イラストが完成して、書影デザインができあがって、オレンジ文庫の公式サイトに書影が公開されて……と進むにつれて徐々に実感が深まりました。今は刊行が本当に楽しみですが、やっぱり緊張しますね。

――自分の投稿生活を振り返って、今年のノベル大賞を目指す投稿者のみなさんに伝えたいことはありますか?

今年のノベル大賞を目指している皆さんには、「他人と自分を比べないで」とお伝えしたいです。いくら人と比べても、結局自分の書きたい物語には自分にしか書けません。自分自身、メンタルがマイナスに傾いた時は、SNSと距離を置いて公募関係の情報をシャットアウトしたり、物理的に「他人と比べる環境」から距離を置いたりしてきました。

気になっても、エゴサはしないし、気持ちが落ち込みがちな時は、自分が目指している公募賞の過去の受賞作を読むのも控える……。執筆に集中するためにはメンタルの自己管理がすごく大事だと痛感しました。もしかすると、それは現代の創作する人すべてに通じるかもしれません。

――森ノさんご自身の、今後の抱負を教えてください。

私には今、書きたいものがたくさんあります。子供が主人公の児童文学的なもの、お仕事小説、本格ミステリー、そしてBLも諦めたくない。何年も頭の中で飼っているキャラもいますし、ジャンルを問わず、それら全てを書いてみたいです。集英社オレンジ文庫では、昨年ノベル大賞で大賞を受賞された泉サリさんの『みるならなるみ/シラナイカナコ』の疾走感が大好きです! 佳作を受賞された柳井はづきさんの『花は愛しき死者たちのために』も、1ページ目から引き込まれる世界観が本当に好き。これからは、自分もそういう作品を書いていきたいなと思っています。

取材・文/増田恵子

このビル、空きはありません! オフィス仲介戦線、異常あり
著者:森ノ薫 装画:ゆき哉
応募総数1846本のノベル大賞で<大賞>に輝いた森ノ薫はいかにして、普通の会社員から作家になったのか‗01
2022年12月20日発売
759円(税込)
集英社オレンジ文庫刊
文庫判 304ページ
ISBN:978-4-08-680483-7
オフィス仲介は戦場だ!!
2022年ノベル大賞<大賞>受賞 契約ゼロ新卒の崖っぷち奮闘記!

入社以来、契約ゼロを続けていたオフィス仲介営業の咲野花。
ついに初契約かと思われた案件も押印直前で壊れ、とうとう営業から謎の男性早乙女さんの一人部署・特務室に異動になった。
特務室に仕事はなく、同期には蔑まれ、花は退職を申し出る。
だが早乙女さんから「査定に響く」という理由で慰留され最後に一つだけクライアントの希望に合致するオフィスビルを探すのだが……。
見つからない。どこにどれだけ電話をかけても見つからない。
これだけ探して、1件も見つからないなんてことある?
花の中で、何かが弾けた。
辞めたかった花の中で、エンジンがかかる音がした
それが崖っぷち社員の反撃の始まりだった――!
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