3秒で伝わる面白さ

「女芸人」として消費されることから、まずは自分たちを守る。そのためには「容姿いじり」や「女芸人を一つの枠のように扱うこと」、そして「女芸人に期待される仕事」についてNOを示すことが必要であり、その拠り所として彼女たちはフェミニズムを求めたのではないか。

そもそもなぜ「女性芸人=容姿いじり」という図式が出来上がったのだろうか。

テレビで活躍している男性芸人と女性芸人を比較すると、女性芸人はなんらか見た目にインパクトがあるタイプの芸人が多い。カメラの前に出てきて3秒で面白さが伝わる芸人である。これにはもしかすると男性芸人と女性芸人の、テレビから与えられる時間の長さの違いが関係しているのかもしれない。

見た目に大きな特徴はないが中身は面白い芸人が、その中身の面白さまで気づいてもらえるには、3秒では短すぎる。見た目に特徴はないが中身は面白い男性芸人が多く活躍しているのは、中身の面白さに気づいてもらえる時間が彼らには与えられていたということだ。

一方女性芸人に対しては、キャラが立っていれば一本釣りのように登場させ、視聴者が飽きるまでずっと同じいじり方をする。3秒で伝わる面白さからなかなか抜け出せない。それが「女性芸人=容姿いじり」というイメージを強くしている一因ではないか。中身の面白さに行き着く前に、彼女たちは別の生き方――優秀なテレビタレントとしての道を模索し始める。「普通の」女芸人として活躍する時間を、彼女たちはなかなか与えられてこなかった。