女芸人は弱者なのか?
容姿いじりにうまいこと返す、セクハラに面白くキレる、逆に若手イケメン俳優にはセクハラまがいの行為をする……Dr.ハインリッヒが「女のクソ仕事」と呼んだ女性芸人に求められるそれらの役割を回避するために、彼女たちはテレビを捨てた。
ピン芸人・鳥居みゆきもまた女芸人と呼ばれることに嫌悪感を抱いていた。「マイノリティーだって言いたいんでしょうね」と鳥居は言う。「『女芸人は弱者』みたいに思われているのか知らないけど、『恥ずかしい感じになっちゃうから笑ってあげなきゃ』が働いていると思うんですよ。女芸人がネタやる時ね。それって私はいらねぇなと思って」
鳥居曰く、「女芸人」とは「フリップ芸」と同じような一つの「枠」なのだと。ネタを見る前に「女芸人」というフィルターがかかる。純粋に面白いネタで勝負したい芸人にとって、それは足枷でしかない。そして鳥居がここまで体重を乗せてジェンダーを語ることができるのも、現在テレビと距離を取っているからなのだろう。Dr.ハインリッヒと同じく「ネタでの評価」を求める女性芸人は、テレビから離れていく。
Dr.ハインリッヒと鳥居みゆき、双方のインタビューで感じたのは、彼女たちにとってフェミニズムは「防御」なのだろうということだ。それがネタやトークに転じるというよりは、シュルレアリスティックなネタの世界観を守るための、防御としてのフェミニズムである。