「わからない時間」を大切にしている

––––最後に、ふかわさんが、日常の中で心がけていることを教えてください。

「わからない時間」を大切にしているところはあるかもしれない。
今って検索すれば何でもすぐわかってしまうから、わからない時間がどんどん削ぎ落とされているじゃないですか。
でも、わからない時間って意外と豊かさにつながる時間じゃないかと思っていて。

僕は毎週日曜日にラジオ(文化放送「阿川佐和子&ふかわりょう 日曜のほとり」)をやっているんですけど、いつも答えを出さないんです。

修学旅行の夜や遠足のバスの後ろで話しているような感じで、答えにたどり着くまでの道中を楽しんでいるところがある。そういう部分を削ぎ落としちゃうと、社会の大事な隙間もなくなってしまうなって思いがあるんです。

「ずっと、ぬかるんでいたい」48歳のふかわりょう、五十にして天命を知る?_3

––––あえて答えを出して安心しなくてもいい。わからないままの自分を受け入れていいと。

実際、人の心って二極じゃないですからね。もっとグラデーションでありもっと曖昧。
正解か不正解かの二元論では語れないものがたくさんあって、あれかな?これかな?って思いを巡らす時間こそが有意義じゃないかなって思う。

だから僕は白黒つかないわかりにくいものに惹かれる。ぬかるんでいる自分や時間を大切にしたいと思っています。

取材・文/若松正子 写真/松井秀樹