緊急避妊法は、避妊のゴールではなくスタート

――緊急避妊薬を求めてきた人に、低用量ピルの服用をすすめるのはなぜですか?

「低用量ピルの服用は、日常的にできる有効な避妊法です。緊急避妊薬は、避妊しなかった、避妊に失敗したなど無防備な性交が行われた過去3日以内での避妊失敗率が0.7%であるのに対して、低用量ピルを1年間服用した人の避妊失敗率は年間で0.29%。

3日間と1年ですから、どちらが推奨されるかは一目瞭然ですよね。

私は、女性の体を守るためにも緊急避妊薬にアクセスしやすい環境づくりに並行して、低用量ピル服用開始の機会をしっかり確保すべきだと考えています。緊急避妊薬は避妊法選択のゴールではなく、スタートなのです」

――ここまでのお話以外に、緊急避妊薬のOTC化について懸念はありますか?

「懸念の一つは、緊急避妊薬を本人以外が求めてくる場合ですね。

例えば、男性が購入しようと来店した場合はどうでしょうか。コンセンサスが取れているカップルのパートナーならまだしも、『アフターピルで避妊すればいい』という考えで、男性が女性に服用を強要することにならないか懸念しています。

事実、アメリカで緊急避妊薬がOTC化されたところ、コンドームを装着しない性行為の増加、病院への受診率などの低下が見られ、『アフターピルで避妊をすれば大丈夫』という誤った認識が広がりました。

日本でもこのような風潮になる可能性は十分あります。事実、性行為のたびに相手の女性に緊急避妊薬の使用を強要した有名人のニュースがありましたね。誤った認識が広がらないためにも、性教育の充実などの環境整備も同時に求められているところです」