日本対ドイツ戦の予想は…

――ちなみに大野さんが個人分析を担当した日本代表の選手がいますよね。大野さんはその選手を元々ご存知でしたか? そして、分析前と分析後では印象は変わるものですか?

どの選手を分析したかは言えないのですが(笑)、Jリーグや海外リーグでプレーする日本人選手の活躍は普段から追っているので、もちろん以前から知っていました。その選手について言及すると、ドリブル・シュート・クロスという目立つプレーについては、分析前のイメージ通りではありました。

ただ、より細かい部分、たとえばオフザボール(ボールを持っていない時)の動きで、「どのスペースに走り込むか」という点に着目すると、「ボールがない時のランニングも、この選手の強みの一つなんだ」という新しい気付きはありました。

今回の分析ではないですが、弱みに着目した時には、「この選手は守備時に後方のスペースを空けがちだな。この部分を改善したら、もっといい選手になるんだろうな」というような印象を受けることもあります。

やはりスター選手を含め、全ての選手に強みと弱みの両方があると、分析をしていても感じます。それぞれの選手の特徴をチームとして補い合って連動するのが、サッカーの面白さの一つだと思いますね。

――グループリーグ初戦の「日本対ドイツ」のスコアと、グループリーグを突破する国を予想してもらえますか?

希望としては、2-0や1-0でドイツに勝ってもらいたいです。自分が分析した日本人選手にゴールを決められたら悔しいので、ドイツが無失点で勝てばいいなと(笑)。ドイツとスペインは優勝候補ですし、客観的に見れば日本代表は相当苦しいグループに入ったな、というのが正直な感想です。ただW杯は年間を通して戦うリーグ戦ではないので、日本代表にもグループ突破のチャンスは十分にあると思います。

個人的な想いとしては、ドイツが日本に勝った上で、ドイツ代表と日本代表がグループリーグを突破して欲しいですね。

――最後に大野さん個人の今後の展望を教えていただけませんか?

小学生から高校生までは柏レイソルの下部組織でプレーし、その後、城西国際大学に進学してサッカーを続けましたが、夢だったJリーガーにはなれませんでした。
ただ、なかなかサッカーの夢を諦めきれず、「選手が無理ならばJリーグの監督になりたい」と大学在学中に考え始めました。ちょうどその頃、ケルン体育大学に在籍していた方と繋がり、「ケルン体育大学を卒業すれば、ドイツサッカー協会の指導者B級ライセンスを取得できる」ということを知ったのです。

将来的には、J1の監督になることができたらと思っていますが、その過程にJ3の監督があると思っており、予算が厳しいチームを指揮するには「 “分析”と“コーチング”の両方に長けた監督になる必要がある」という考えに至り、現在大学でコーチングやスポーツ心理学などを学び、チームケルンでは分析を勉強しています。

困難だと思いますが、可能な限りサッカー選手としてのキャリアも積み、夢を叶えたいです。

日本代表も丸裸に。W杯ドイツ代表を支える分析集団“チーム・ケルン”の日本人スタッフを直撃_2
チーム・ケルンに在籍する3人の日本人スタッフ。左から大野嵩仁氏、平川聖剛氏・吉田健太氏

取材・文/佐藤麻水
写真提供/大野嵩仁