状況に応じたプレーの“クセ”を見抜く

――個人分析とは具体的にどのようなものでしょうか。「日本代表の三笘選手は、サイドでの1対1の状況であれば、ドリブル突破の成功率が〇〇%」といったようなイメージが思い浮かびますが。

チーム・ケルンでは、今おっしゃった「1対1でのドリブルの勝率」というような、“パーセンテージの分析”は行いません。その理由は「勝率に着目した分析は、相手のレベルが変わると参考にならない」からです。

たとえば日本代表選手の分析で、「アジアのあまり強くない格下チームとの対戦時のドリブル勝率」と、「日本代表より格上のブラジル代表との対戦時のドリブル勝率」を比べたとしても、それらは“同じ1試合”でも“同じ条件”とは言えず、有益な情報ではありません。

勝率には再現性がない、とでも言ったほうが的確でしょうか。ただ、ドリブルの勝率や走行距離、スプリント回数などは、選手のコンディションを推し量る時に参考になるとは思います。

――では実際にチーム・ケルンではどうやって分析を行うのでしょうか?

あらかじめ用意された個人分析用のフォーマットがあり、選手の名前、身長・体重、利き足、今シーズン何試合出場、ゴールやアシストなどの結果、というような情報が記されています。その下に、チーム・ケルンのスタッフが分析した項目を追記していきます。

分析する項目はかなり細かく設定されているのですが、それらを「強み・特徴・弱み」に分類し、強みは赤、特徴は黒、とそれぞれ別の色で記していきます。また文字の情報に加え、それらに該当する実際のプレー映像を過去の試合から見つけ、編集し、グループリーダーに送ります。

分析項目は、たとえばサイドアタッカーが攻撃時に1対1の状況で、「ボディフェイントを入れながら、利き足を使って縦に突破するのが得意」というようなものです。

守備の項目では、サイドバックの選手が自分と逆サイドの守備が突破されてクロスを上げられる時、「自分のマークを優先するのか、もしくはスペースを埋めることを優先するのか」や「ボールウォッチャーになりやすい(本来マークするはずの相手選手がフリーになってしまう)」、などの項目について分析していきます。

つまり一人の選手の「様々な状況に応じたプレーの“クセ”」を見つけていきます。ですが、同じような項目でも、ポジションによって「どこを重点的に分析するのか」が細かく変わりますね。