息子が亡くなった翌日、ディスニーランドへ…
なぜ、夫婦はこのような非人道的な方法で子供の自由を奪ったのか。忍は次のように述べた。
「いつも普通に(騒ぐ犬や猫を)ケージに入れてたから」
2人にとっては子供もペットも同じなのである。だから、騒ぐペットを閉じ込めるのと同様に、次男をケージに閉じ込めたのだ。
そして4か月後、次男は命を落とすのである――。
こうして見ていくと、親のゆがみが、いかに残忍な虐待を生むかがわかるだろう。厄介なのは、親自身がそれを異常だと思っていないことだ。
彼らは次男が死亡したことを発見すると、「自然が好きだから」という理由で家族みんなで山へ埋めに行き、翌日は何事もなかったかのようにディズニーランドへ遊びに行った。
事件の詳細は拙著『「鬼畜」の家~わが子を殺す親たち』(新潮文庫)を読んでいただきたいが、2人には知的障害はなく、IQも100以上ある。すべては人格の問題なのである。
これからも、虐待死事件は起き続けるだろう。その時、社会の側がしなければならないのは、加害者へのバッシングだけでなく、再発を防ぐために何をしなければならないのかを考えることだ。
こうした親を生まないためには、あるいは親の虐待を防ぐにはどうするべきなのかという議論の先にしか、虐待予防の手立ては見えてこない。
取材・文/石井光太