夫妻はともにゆがんだ母親のもとに産まれた

東京都足立区のアパートで、その事件は起きた。生活保護を受給していた夫婦が、3歳の次男を「さわぐ」という理由で約4か月間もウサギ用ケージに閉じ込め、死に至らしめたのである。

夫婦は、皆川忍とその妻の皆川朋美。事件後、2人は口をそろえて子供への愛情を口にした。「自分たちは子供を愛していたのだ」と。

では、なぜ狭いウサギ用ケージに3歳のわが子を長らく監禁したのか。それを明らかにするには、彼らの生い立ちを見る必要がある。夫の忍、妻の朋美の母親は、ともに「モンスター」と呼ばれる常識の欠如した女性だった。まず、忍の生い立ちから見てみたい。

忍の母親のA子は、学生時代から破天荒な言動が目立ち、10代で水商売の世界に入った。18歳の時に交際していたトラック運転手の男性との間に誕生したのが、長男の忍だった。だが、産後すぐに水商売の世界に戻り、乳飲み子の忍を家に放ったらかしたまま昼夜の区別なく遊び回っていた。

見かねた夫が注意をすると、A子は家を飛び出し、キャバレーの寮で暮らしはじめて帰ってこなくなった。夫は困り果て、忍を乳児院に預けることにした。A子は何の反省もなく、翌年に長女、2年後に次女、さらにその次の年に三女、そして離婚した後にも4年後に四女をもうけた。

だが、A子は子供を誰一人として育てようとしなかった。出産前から乳児院に入れることを決めて、退院と同時に乳児院に預けたのだ。無計画に次から次へと子供を生み、一切の責任を施設に押し付けたのである(このうち次女にいたっては出生届さえ出していなかった)。